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皆様は「よつばと!」ご存知ですか? この作品は5歳の子ども主人公「よつば」とその周囲の (ゆかいな) 登場人物による日常系のマンガです。超能力や魔法が出てくることも、怪獣が出てくることも、異世界に行くこともありません。誰もが過ごしたごく普通の子ども時代、しかして懐かしくもあり、うらやましくもある、そんな子どもの日常を見事に描いた作品です!

なんとこのよつばと!、英語やドイツ語に翻訳されて海外でも出版されています。英語版のタイトルは “Yotsuba&!” です。そりゃもう大好評ですよ! 米AmazonのレビューではYotsuba&! Vol.1は☆5が約9割を占め、イギリスのレビューでも好評です。

子ども中心の会話で、多読初心者にもオススメ!

さて、Yotsuba&! ですが、小学生未満の子供が主人公という事で、日本語はもちろん英語でもかなり易しい表現、言葉遣いとなっており、英語の多読初心者にオススメできる作品です。(むしろ「よつばと!」が海外の日本語学習者向けにオススメされているぐらいです)

本記事では、作品レビューおよび語彙レベル解析の結果を紹介します。

よつばと! (Yotsuba&!)とは?

Yotsuba&! とは?

子どもが主役の日常系マンガ

5歳の女の子「よつば」が主役の日常を描いたマンガです。大人にとっては最早当たり前になってしまった日常も、子どもにとっては新鮮に映るもの、そんな子どもの頃の感動を思い起こさせてくれる作品です。

基本的に主人公「よつば」と何か1つがテーマとなって1話が構成されています。例えば、第1話のタイトルは「よつば と ひっこし」、第2話は「よつば と あいさつ」となっています。このように、よつばが体験する日常とよつばの感情がセットとなった物語となっているため、タイトルが「よつばと!」となっています。そして、英語訳のタイトルは “Yotsuba&!”。安直にYotsubato! にするのではなく、タイトルに込められた意味をくみ取って “&” を使っている点が良いですね! ちなみに発音は「Yotsuba and」ではなく「Yotsuba to」と、日本語版と同じようです。

なお、作者であるあずまきよひこ氏の別作品である「あずまんが大王」も英語版が発売されていますよ!

海外でも高い評価

日本の日常マンガなのですが、海外でもこの物語は共感を得られるようで好評を博しています。子どもの生き様は世界共通のようですね!

Yotsuba&! Vol.1のレーティング (2017年9月時点) は、米Amazonが 4.8/5 (98レビュー)、英Amazon では 4.9/5 (24レビュー)、goodreads では 4.34/5 (13528採点者) と、総じて高評価となっています。

登場人物

主人公Yotsubaの呼び方の日英対比で、Yotsuba&! に登場する主な登場人物を紹介しますね。

登場人物英語関係
よつばYotsuba主人公
とーちゃんDaddyよつばの育ての父。おもしろい
ジャンボJumboとーちゃんの友人。でかい
やんだYandaとーちゃんの友人。てき
あさぎAsagiお隣さんの3姉妹長女。きれい
ふーかFuukaお隣さんの3姉妹次女。ゆにーく
えなEnaお隣さんの3姉妹末っ子。しっかりもの
とらToraあさぎの友人。かっこいい
しまうーMiss Stakeふーかの友人。るいとも
みうらMiuraえなの友人。くーる
ダンボーDanboなぞのロボット。ダンボール製
ばーちゃんGrandmaとーちゃんのかーちゃん。つよい

ダジャレの英訳は翻訳者の腕の見せ所

よつば、ふーか、しまうーの3人

基本的には名前はそのままですが、ふーかの友人しまうーは全く変わっていますね。

しまうーとは、クラスの自己紹介で「よろしくおねがいしまう」と噛んでしまったところから付いたニックネームなのですが、英語版ではMistakeから連想してMiss Stakeとなっています。英語版ではこのように、日本語や日本の文化に基づいた部分は英語圏の文化に合うように改変されている箇所があります。探すと面白いですよ。

音を取るか意味を取るか……

ダンボーはそのままDanboなのですが、実はCardboという呼称もあります。現在販売されているYotsuba&!はYen Pressが翻訳しているのですが、実はYen Pressの前にA.D. VisionがYotsuba&!の英語版を5巻まで出版していました。このA.D. Vision版ではダンボーはCardboard (ダンボール) からCardboと名付けてられていました。

もし中古でYotsuba&! Vol.1~5を購入する場合はA.D. Vision版かYen Press版かを事前にお確かめください。私はA.D. Vision版を読んだことはありませんが、ネットではYen Press版の方が評価が高いようです。

Yotsuba&! のココがオススメ

全年齢向けでありながら簡単な単語、表現が多い

5歳の女の子が物語の主役となるため、ほとんどが基本的な英単語、簡易な表現で構成されています。それでいて全年齢向け作品なので、英語学習者向けにレベル制限がついたGraded Readersとは異なり文章が自然です。もちろん、単語レベルに制限がないので、ひぐらし、ヒナドリなど一般的な英語学習の枠を超えた単語も登場しますが、数は多くありません。

Yotsuba&! サンプル画像

Yotsuba&! Vol.13 © Kiyohiko Azuma / YOTUBA SUTAZIO

“現代” の “日本” の “日常” が舞台

ここはかなり重要なポイントです。現代日本の日常、それは我々日本人にとって追加で必要となる背景知識が皆無ということに他なりません。

時代が違う、フィクションである、といった要素が入ってくると必ず詳細な舞台説明が必要となります。特にフィクション作品になると造語の登場頻度が多くなり、ハードルが急激に高くなります。また国・文化が異なると、前提となる背景知識が異なるため、理解しづらい場面が発生してきます。

しかしこのYotsuba&! はそんな要素一切なし! 登場する固有名詞も日本のものだから覚えやすい! といい事ずくめです。

“間” が多く、英文に疲れにくい

Yotsuba&! は、子どもの感情を仕草や間でうまく表現してきます。そのため、1ページあたりの文章量が少なく、英語の長文に慣れていない人でも比較的読み進めやすい構成となっています。

価格が高いのだから字がいっぱいある方がオトク、なんて考えてはいけません。ある程度英語の読書に慣れていても、字が多すぎると途中で疲れて挫折しやすくなります。デスノートや鋼の錬金術師の英語版もありますが、これらはかなり文字量が多く、初心者にはオススメできません。最初は文字が少なすぎると感じる本から始めるのがコツですよ!

擬音から英単語が覚えやすい

くしゅん、ゴホゴホ、ハァ。

日本ではくしゃみ、咳、溜息の動作を表現するために使う当たり前の擬音ですが、実は英語では日本語の擬音のように音をそのまま表記することは多くありません。よつばと! でも擬音が多用されますが、英語版のマンガではどのように表現されていると思いますか?

Yotsuba&! サンプル画像

Yotsuba&! Vol.13 © Kiyohiko Azuma / YOTUBA SUTAZIO

英語では咳やくしゃみなどは、その動作を表す動詞を用います。くしゃみなら “sneeze”、咳なら “cough”、溜息なら “sign” という動詞をそのまま擬音を表記する箇所に当てはめます。

Yotsuba&! でもこの用法が用いられていますが、1つ面白い点があります。日本語の擬音、擬音を音声化した英語、そしてその動作を表す動詞の3種類が用いられています。

例えば砂場でジャンプをする場面では、以下のように表記されています。

  • だだだだだ DA DA DA DA DA
  • だん DAN (LEAP)  ※ leap = 跳躍
  • ばん BAN (BAM)   ※ bam = ドスンという音を立てる

わざわざ擬音の音を英語で表記する方法は、英語圏の人に日本語の表現をそのまま味わえるようにという配慮からだと思いますが、我々日本人にとっても英単語の意味を感覚的に捉えられるメリットがあります。

例えば、上記画像の3コマ目で「ばん」という表記がなく、ただ “BAM” とだけ表記されていると、単語の意味を知らないと正確な意図を理解することができません。しかし、日本語の擬音と同時に表記してあることで、”BAM” とは「ばんという音を立てる行為のことだ」と映像で覚えられます。他にも、ジュースを飲むときの動作で「ゴクッ (Gulp)」と表記があれば、「gulp は何かを飲む動作のこと」と映像で単語を覚えることができます。

このような擬音での表記から自然と基本的な動詞を覚えられるというメリットがあるところも Yotsuba&! の魅力ですね!

Yotsuba&! のココがチョット……

刊行ペースがゆっくり

よつばと! の最新感は2018年11月現在で14巻です。9巻以降の刊行ペースはかなりゆっくりで、1~2年で1冊のペースです。加えて英語版が出るのはその後ですから……さらに遅くなります。

休載が多いながらも連載は続いていますので、のんびり待ちましょう。

よつばと!以外の英語版マンガ

よつばと!は英文のレベルが易しめで英語マンガを初めて読む方にはオススメの作品ですが、その他にも現代日本が舞台の日常・恋愛系マンガは読みやすいと思います。オススメの作品をまとめているので以下記事も参照ください!

よつばと! 1巻

英語タイトル Yotsuba&! Vol.1

よつばと! 13巻

英語タイトル Yotsuba&! Vol.13



Yotsuba&!の語彙レベル解析

概要

Yotsuba&! Vol.13で使われている英文の語彙レベルを26000語レベルで分類していきます。語彙レベルはアルクのSVL 12000 (1~12000語レベル) と極限の英単語・終極の英単語 (12001~26000語レベル) を基準としています。それぞれの詳細は以下を参照ください。

本記事で解析の対象にする単語

本記事ではYotsuba&! Vol.13の本文を対象とします。目次や巻末などは対象外です。また、本文を3種類に分けると、吹き出し内のセリフ、吹き出し外のセリフ、擬音となりますが、ここでは擬音は解析対象としません。

以下Fuukaさんのコマでは、”It’s a wittle kitty.” と “Meow. Meow.” は解析対象、”KASA (Crinkle)” は対象外です。

Yotsuba&! サンプル画像

Yotsuba&! Vol.13 © Kiyohiko Azuma / YOTUBA SUTAZIO

wittle は little を崩した (子どもが使う) 表現です。元の日本語「ねこだニャ」という言葉に合わせて使用しているようですね。

Yotsuba&! の語彙レベル

総語数

上記は本文中のセリフで使われた6255語を、語彙レベルで分類した結果です。

26000語レベルで解析していますが、全体の86%は1000語レベル、つまり中学校で学ぶような簡単な英単語で構成されていることが分かります。やはり5歳の子どもが主役という事で、シンプルな表現が多いということでしょう。

英単語の種類

単語の重複を除外し、英単語の種類で分類した結果が上記です。866種類の英単語が使われていました。この結果でも、大体語彙は3000語ほどあれば良さそうだなと感じられるかと思います。

Yotsuba&! の目標語彙数

目安カバー率目標語彙数
英文を楽しむ総語数の95%2,800
キチンと理解する総語数の98%6,900

Yotsuba&! Vol.13を読む上で、目安となる語彙数は2,800です。英文を「楽しむ」には総語数の95%、「キチンと理解する」には98%が目安と言われていますので、まずは95%カバーできる語彙数を目指しましょう。この辺りの詳細や自分の語彙力の把握方法については以下記事を参照してください。

範囲外の単語

Yotsuba&! Vo.13の英文を26000語レベルで分類しましたが、範囲外の単語が15語ありました。参考までに掲載しておきますね。bulbul (ヒヨドリ) や wagtail (セキレイ) など、中々お目にかかれない単語ではないかと思います。

Yotsuba&! Vol.13 26000語の範囲外の単語 (15語)

bulbul, croquette, faceless, fashionably, headbutt, owie, performant, pinecone, pointy, poofy, prez, spiky, unsatisfying, videocall, wagtail

英語マンガで学ぶ

Yotsuba&! での英語の学び方

多読初心者に重要なのは心構え

マンガと言えども英語は英語、相応の慣れと実力が求められてきます。個人的に英訳マンガを読む時に実践していること、気を付けていることなどを「英語マンガで多読のすゝめ! 挫折しない読み方を考える」にまとめたので、参考にしてみてくださいね。

Yotsuba から学ぶこの表現! – Dummy!! –

せっかくなので、この記事でもYotsubaさんから単語の意味を1つ教えてもらいましょう!

皆様は “dummy” の意味はご存じですか? 一般的には身代わりとかダミー人形といった使い方をするこの単語ですが、Yotsuba&! では別の意味で使われています。

自分で掘った落とし穴に落ちたYotsubaは、Fuukaにからかわれ、”Dummy!!” と叫びます。

Yotsuba&! サンプル画像

Yotsuba&! Vol.13 © Kiyohiko Azuma / YOTUBA SUTAZIO

この状況から “Dummy” の意味が何となく予想がつきませんか? はい、ここでは「ばかー!!」の英語訳として dummy が使われています。このように映像や状況とセットで覚えた単語は忘れにくいものです。ここで覚えた “Dummy!!” を有効活用してくださいね!

英語のレビューや記事を楽しむ

マンガを読み終えて完了! とするのは勿体ありません。もし内容が気に入ったのなら、他の人のレビューや感想も楽しく読むことができます。

短文レビューを読む

まずはAmazonのレビューが読みやすいのではないでしょうか。レイアウトも慣れているかと思いますしね。また、世界最大級の本好きのためのサイト、Goodreadsにも大量のレビューがあります。こちらも短めのレビューなので、記事よりは楽によめるのではないでしょうか。

レビュー、紹介記事を読む

基本的に紹介記事はYotsuba&!が好きな人が執筆しているので、読んでいて楽しくなりますよね! というわけで、いくつか紹介記事をピックアップしました。それなりの長さの英文なので短文のレビューよりも歯ごたえがありますが、このような記事になれてくると英語が楽しくなってきますよ。

レビューを聞く

YoutubeにもいろいろとYotsuba&!のレビューが投稿されています。いくつかみましたが、比較的聞きやすい動画を選びましたので、リスニングにチャレンジしたい方は視聴されてみてはいかがでしょうか。