【英語でゲーム】 VA-11 Hall-A ヴァルハラの感想
英語版 VA-11 Hall-A ヴァルハラ
概要
一日を変え、一生を変えるカクテルを。
英語タイトル | VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action |
ジャンル | サイバーパンクバーテンダーアドベンチャー |
私のプレイ時間 | 約21時間 (初見で1周クリア: 約16時間。攻略情報を見ながらエンド回収等: 約5時間) |
機種 | PC (Steam)、PS4、PS Vita、Switch |
あなたのカクテルが、誰かの運命を変える。
アンドロイドやナノマシン、遺伝子改造などが当たり前に存在する 207X 年。 27 歳の女性・ジルは大企業と犯罪者たちが住まう街のスラムにあるバー「VA-11 HALL-A (ヴァルハラ)」のバーテンダーとなる。陰謀に巻き込まれるわけでもなく、探偵となって事件を解決するわけでもない。ただのバーテンダーとして愚痴を聞き、時にはアドバイスをしながら彼女は街に住む人々と交流を深めていく――。
英語でプレイするには
本作は多言語対応している。Steam 版、PS4/Vita 版、Switch 版いずれも字幕を日本語と英語で切り替え可能。
ゲームの特徴
基本はノベルゲーム
カクテルを提供して愚痴を聞く
本作はドット絵と良質な BGM で描かれたサイバーパンク的世界観と、バーテンダーとなってカクテルを客に提供していくという点が大きな特徴で魅力でもあるのだが、ゲーム性はあまりなく以下 2 点を繰り返していくノベルゲームのような作品。
- 客が注文したカクテルをブレンドして提供する
- 客と日常会話をする
一度客が来店すると 2 ~ 3回ほどカクテルの注文が来るが、カクテルを提供後はしばらくバーテンダーと客の日常会話が繰り広げられる。カクテル作成以外に操作はなく会話もただ読むだけだが、客は皆個性的で面白い。プライベート・仕事関係での愚痴や自慢話、近況報告など大した話ではないのだが、彼らの個性に加えて海外ドラマ的なセリフ回しも相まって彼らの会話は読むだけでも楽しい。海外ドラマとノベルゲーム好きに向けのゲームだと思う。
作ったカクテルが会話内容を変えることも
カクテルの作り方自体は簡単
基本的に客は特定のカクテルを注文してくるので、こちらは望み通りのカクテルを作って提供するだけだが、客の望んだカクテルを提供したか否か、アルコール度数高めのカクテルを作って客を酔わせたか否かで会話内容が変わる場合もある。エンディングに影響を与えたりもするので、客の好みを覚えておいて、うまいことカクテルを提供できるとバーテンダーとしての満足感が得られる。
肝心のカクテルの作り方は簡単。ゲームを始めれば説明があるが、画面右側にあるフレーバー 5 種類をレシピ通りに混ぜて [Mix] ボタンを押すだけである。その他、レシピの説明に以下 4 種類の説明が加えられている場合は、それに応じた操作を行えばよい。
on the rocks | Ice アイコンを押す |
All aged | Age (熟成) アイコンを押す |
All mixed | Mix は 5秒未満 |
All blended | Mix は 5秒以上 |
英語の題材として
海外ドラマ的な難しさ
割と難易度が高い会話
バーでの会話だからか、客に寄りけりではあるがスラング・下ネタが多かった。さらに様々な分野の人間が客として来訪するので話題も多岐に渡るし、言い回しなどからもフレンズなどの海外ドラマのようなノリを感じた。語彙レベル的には海外ドラマより難しめの単語・表現がチョイチョイでてきたので、それなりに歯ごたえのある難易度。例えば上記画像にある通り、 “lie through one’s teeth (ぬけぬけと嘘をつく)” という表現などが出てくる。
一文が短く話題も客も定期的に変わるので部分的に話が理解できなくても困ることは少ないと思う。珍しい語彙が使われていたりするので英語の勉強にもなるし会話内容が面白かったのでオススメしたい。ただ、話題の癖が強いので (特に下ネタ)、海外ドラマや他のノベル・アドベンチャーゲームにある程度慣れてからチャレンジしてもらいたいゲーム。
遭遇した表現を一部紹介
bear with someone
(辛抱してつき合う,我慢する)
しばらくは自分のレッスンを我慢して受けてくれと、Gillian が主人公に発言した場面。
しばらく我慢して聞いたり待ったりして欲しい時に使う表現。ちなみにセリフ中にある “Piano Man” とはカクテルの名前。
Coming right up.
(すぐにお持ちします、すぐに参ります)
客からカクテルの注文を受けたので、すぐに用意しますと主人公が返答した場面。
レストランなどで注文をし、注文料理がすぐに出せる状態の店員が返す定番表現。
under the table
(裏で、不正に)
自分が属している組織の中には、不正取引をしている疑いがある会社に (内偵のために) 配置されている部隊もあると、客が話している場面。
見つからないようにテーブルの下でこっそりと、という事。
on the house
(店の奢り)
ボスが連れてきた行倒れが目を覚ましたので、ドリンクを奢ってあげると主人公が発言した場面。
奢るという表現は色々あるが、店の奢りだったり、無料サービスだった時はこの表現をよく使う。
no mean feat
(大した行為、立派な業績)
主人公が奨学金を得て香港に行く予定があったと発言したら、それは大したものだと客が褒めた場面。
“mean feat” だと「平凡な業績」になるが、”no” で打ち消しているので「立派な業績」という意味になる。
run of the mill
(平凡な、普通の)
自分の実力を発揮したいが、平凡な仕事しか依頼されないと客がぼやいている場面。
字義としては「工場のひと運転 (ででき上がる製品)」という意味で、要は「平凡な」ということになる。
to a fault
(極端に、度が過ぎて)
Dorothy (右) が Sei (左) の事を、裏表のない極端に素直な人間だと評した場面。
どんなに良い特徴であっても、度が過ぎると欠点になってしまうという事。
guilty as charged
(告発のとおり有罪、君の言う通りだ)
なぜ私は人を蹴る人間だと思われているのかと Betty (左) が Deal (右) に聞いたら、以前人を蹴っている場面を目撃したことがあるからと Deal が発言したので、君の言う通りだと Betty が認めた場面。
言葉通り「charge (告訴) された通り有罪」ということだが、日常会話でフランクに使うことも多い。
Rise and shine.
(元気よく起きて)
朝、上司の Dana に主人公が起こされた場面。
“shine” は「行動する」というニュアンス。起きて靴を磨くという軍隊の習慣から来ているらしい。
全体的な感想
始めてみると意外な面白さに気付く
セール時にとりあえず本作を購入したは良いものの、実はこのレトロな雰囲気のゲームを楽しめるか不安を持っていた。しかしいざ初めてみると意外に面白くて驚いた。主に以下の点が気に入った。
- 個性的な客ばかりなので、いろいろな愚痴や近況を聞けて面白い
- 海外ドラマ的な言い回しが多く、英文は読み応えがある
- 日本にまつわるネタが多くニヤリとできる
- 客の要望の応えたカクテルを作るのが意外に面白い
- 世界観にマッチした BGM や SE は聞いていて気持ちが良い
ぶっちゃけ本作は、陰謀に巻き込まれるとか事件を解決するとかの大きなストーリーは全くない。物語が展開される場面もほとんどがバーで、なにか事件があっても人づてに内容を聞くだけである。しかし客が皆個性的で、何気ない会話が本当に面白い。次はどんな客がくるのか、ご新規さんか常連さんか、この前話していた件はどうなったのか。一人ひとり相手に会話を繰り広げるのが楽しいゲームはなかなか珍しいと思った。
海外のインディーゲームなこともあってかスラング・下ネタが多く、会話の言い回しも相まって海外ドラマのような印象を受けた。そのため英文も読み応えがあり、意欲的にゲームに取り組めた気がする。文章が簡単すぎると眠くなってくるし……。また、開発者は日本に詳しいようで、主人公の自宅には炬燵があったり職場の上司がかつて「赤い彗星」と呼ばれていたりするなど、日本の文化・アニメのネタが所々ありニヤリとできたのも良かった。
会話はどの客とでも面白かったが、作中一番の良識人である Sei との会話は下ネタ・スラングが殆ど登場せず、癒しの時間だったように思う。しかしそんな彼女にも苦労した過去があり、客と仲良くなるにつれて込み入った話を聞けるようになるのも楽しかった。BGM を自分で選んで流したり、客の要望を受けてカクテルを作ったりするのでバーテンダーとして感情移入できる要素もあり、単純なゲーム性ながらも興味深い作品だったと感じる。
不満点
面白いゲームではあったが、細かい不満点はもちろんあった。具体的には以下。
- フォントが読みづらい
- 操作性が悪い
- 下ネタ多すぎ
まず、セリフは文字が粗くて読みづらい。本作のグラフィックはドット絵なので、フォントだけ滑らかでも違和感があるから仕方がないが、読みづらいものは読みづらい。また、操作性も悪かった。初回の 1 周だけなら気にならないが、エンディング回収のために 2 周目を始めると、不便な操作性に気づかされた。見た目がレトロなのはともかく操作性まで古臭くしなくても良かったのに……。あと下ネタはクドくてエグい。海外ドラマ等で下ネタに慣れていれば良いが、そうでない場合はかなりうんざりするレベル。慣れていない人はプレイしない方が良いかも……。
と、不満点はあるが、英語学習者的には様々な表現が見られるので下ネタであっても勉強になるというメリットはある。それなりに難易度がある英文だと思うが、独特の世界観とゲーム性と会話内容が面白いので、海外ドラマとノベルゲームが好きなら英語でチャレンジするのもあり。また、他のノベル・アドベンチャーゲームにも興味があれば「英語ノベルゲーム19選」を参考に。
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管理人 矢月
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