古い屋敷で見つけた謎の本、そしてその本を巡る妖精達との諍い! ゴブリンやトロル、エルフなどが登場するサバイバルファンタジー以下 8 冊を読んでみました!

  • The Spiderwick Chronicles 全5巻
  • Beyond the Spiderwick Chronicles 全3巻

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The Spiderwick Chronicles シリーズ

概要

The Spiderwick Chronicles
日本語タイトルスパイダーウィック家の謎
著者Holly Black (ホリー・ブラック)、Tony DiTerlizzi (トニー・ディテルリッジ)
巻数全5巻
YL4.6~4.7
語数各巻 約9,300~約13,000語 (計51,516語)
Beyond the Spiderwick Chronicles
日本語タイトルNEWスパイダーウィック家の謎
著者Holly Black (ホリー・ブラック)、Tony DiTerlizzi (トニー・ディテルリッジ)
巻数全3巻
YL4.7
語数各巻 約16,300~約20,700語 (計53,353語)
屋敷に隠された妖精図鑑をめぐる物語

The Spiderwick Chronicles は、母と共に古びた屋敷になって来た 9 歳の双子の少年と 13 歳の姉が主人公のサバイバルファンタジー物語。姉弟の 3 人が屋敷の隠し部屋と妖精について書かれている謎の本を見つけたことにより、様々な妖精から狙われ戦うことになる。妖精 (フェアリー) というと可愛らしいイメージがあるが、この本ではゴブリンやトロルなどファンタジー生物の総称が妖精となっており、見た目も結構味がある。

全体的な感想は以下。

  • 挿絵が魅力的で、数も豊富
  • 第 1 巻は物語の導入。第 2 巻から本格的に動き出す
  • 一部単語は難しいが、会話が多いし展開が早いので読みやすい
  • 姉弟の仲の良さがリアル。極端に仲が良いわけでも悪いわけでもないが、家族としては大事に思っている

最初にこのシリーズに惹かれたキッカケはハードカバー版の表紙。姉弟 3 人の表情や絵のタッチがとても私好みで、すぐ読みたくなってしまった。実際に読んでみると、挿絵も豊富だし読んでいて楽しかったな。特に姉 Mallory のしかめっ面がとても良かった。あの表情、癖になる (笑。電子書籍の表紙もハードカバー版と同じにして欲しいな。というか、電子書籍は表紙を自分で設定できる機能を付けて欲しい!

物語としては、1 巻も面白いのだけど全体から見たらまだほんの導入で。実際に様々な妖精達と出会うのは 2 巻からだった。最初はゴブリンやトロルなど、いわゆる敵役としての登場が多い種族が多めだったけど、後にエルフなども出てきて、妖精間でも縄張り争いがあるのだなとしみじみと思ってしまった。まぁ語数が多くないから、各種族の出番は多くなかったけど、有名どころは殆ど出てきたのではないかな。それに作中に出てきた妖精図鑑、実際にアーサー・スパイダーウィックの妖精図鑑 (Arthur Spiderwick’s Field Guide to the Fantastical World Around You) というタイトルで販売されているみたいなので、機会があればちょっと読んでみたい……。

キャラクターは、姉の Mallory が一番好きになってしまったな~。最初に彼女が登場した時は箒で壁をブチ破るし、姉弟の仲もイマイチよくなさそうだったので特別好印象を抱いていたわけではなかったけど、弟の身を案じる姿や、危険な場面でも率先して前を歩こうとする行動力がだんだんと魅力的に思えてきて。まぁ彼女のイラストイメージが結構好きというのもある。反面、弟の Jared と Simon は、まだまだ子供だなぁという印象がだんだんと強くなっていったかな。怒りを制御できなかったり、動物の事となるとカッとなって行動したり。でもまぁ 9 歳だしな。それに、2 人も家族に対してはキチンと愛情を持って大切にしているという描写が多かったので、嫌いではないよ。

英語は、一文が長くないし会話が多めだったので熱中して読めて楽しかった。でも一部単語が難しいとは思ったかな。dumbwaiter (小型の給仕用エレベーター) とか。挿絵が豊富なので、絵が助けになる場面は結構あると思う。

続編 Beyond the Spiderwick Chronicles

続編は、親の再婚により家族となった 11 歳の少年と義理の姉が主人公。舞台はフロリダで、前シリーズの主人公 Jared 達も登場する。時間的には前シリーズの騒動の後で、Jared 達が (Holly Black と Tony DiTerlizzi に頼んで) 妖精図鑑を出版した後。新主人公の一人である少女はその妖精図鑑を読んでおり、妖精に関する知識を多少持っているという状況で物語が始まる。

こちらのシリーズの主な感想は以下。

  • 妖精が引き起こす現象の規模がデカく、ハラハラ感が増している
  • 第 1 巻の内容は物足りなかったが、第 2 巻からは面白い
  • 家族仲があまりよくなく、登場人物の魅力はイマイチ
  • 前シリーズの主人公 3 人の登場は素直にうれしい

フロリダのとある開発区に巨大な妖精が現れ暴れ回るのだが、破壊の規模は全体的に前シリーズよりも大きく、ドキドキハラハラの場面や過激な描写が増えていで面白かった! ただ、登場人物達は自己中心的な発言が多く、無責任な言動もしばしばあるので、イライラする場面も前シリーズより多かったかな……。今シリーズでは、再婚で 1 つ屋根の下で暮らし始めた 5 人が、如何に家族となっていくのかという部分もテーマだった気がするので、その影響かな。あと、協力してくれる妖精達もいるのだが、イマイチ主人公達とかみ合っておらず、人間と妖精の価値観は合わないみたいな描写が多かったのは個人的に興味深かった。やはり種族が違うと共存は難しいのだろうな……。

新キャラクターの魅力がイマイチだったし第 1 巻は展開がゆっくりで面白さが少し不足していたけど、第 2 ~ 3 巻はしっかり面白かったので、前シリーズが気に入った場合は続編も読んでみて良いと思う。

主な登場人物

両親が離婚し、母と共に親戚が所有する古びた屋敷に引っ越してきた 9 歳の双子の少年と 13 歳の姉が主人公。一方、続編は 11 歳の少年とその義理の姉を主役とした物語。

The Spiderwick Chronicles
Jared9 歳の少年。両親が離婚してから怒りの感情の制御がうまくできない
SimonJared の双子の少年。動物好き
MalloryJared の姉。13 歳。フェンシング選手
HelenJared 達の母
Lucinda SpiderwickJared 達の大叔母。屋敷の持ち主。入院中
Arthur SpiderwickLucinda の父。妖精図鑑の著者
Beyond the Spiderwick Chronicles
Nicholas11 歳の少年。愛称は Nick。少し太っていて運動が苦手
Laurie親の再婚で Nicholas の義理の姉となった少女。11 歳。妖精との邂逅を願っている
JulianNicholas の兄。愛称は Jules。サーファー
PaulNicholas、Julian の実父
CharleneLaurie の実母
CindyJulian の恋人
Jack近所に住む老人。Jack の父は Arthur Spiderwick と親交があった

The Spiderwick Chronicles (1 ~ 5 巻)

YL (読みやすさレベル) は自己評価。語数は AR BookFinder より。
#1: The Field Guide
YL4.7
総語数9,844
邦訳人間、見るべからず

両親が離婚し、母に連れられ古びた屋敷に引っ越してきた 9 歳の少年 Jared とその双子の Simon、そして 13 歳の姉 Mallory は、屋敷の壁の中から生物が移動する音が聞こえる事に気づく。気になった彼らは音の出どころを探索すると、キッチンから上階に食べ物を送り込む小型エレベーターの存在に気づいた。そしてその先には、隠し部屋があったのだ!

隠し部屋で見つけた謎のヒントをもとに妖精図鑑を見つけた Jared だったが……という感じで、特に後半からワクワクする展開。しかし何者かによって引き起こされたイタズラが、両親の離婚で精神的に不安定となってしまった Jared のせいにされていた様はなかなか悲しいものがあったね。双子の Simon が信じてくれたし、姉も頭ごなしに Jared を否定してこなかったのは良かった。というか、姉の Mallory が箒で壁をぶち抜いたのには驚かされた。13 歳にしては思考が暴力に寄り過ぎでは (笑。頻繁に挿入される挿絵は非常に魅力があったし、物語もまだこれからという感じで終わったので続きが非常に楽しみだ!

#2: The Seeing Stone
YL4.6
総語数9,347
邦訳魔法の石をさがせ

屋敷に住んでいた小さな妖精の Thimbletack は妖精図鑑を処分するように忠告する。しかし Jared は忠告を聞かず、図鑑に夢中になっていた。すると、Simon の飼い猫が行方不明になり、Simon 自身の突然現れた Goblin 達に攫われてしまった!!

第 1 巻では図鑑と妖精を見つけるまでの話だったけど、2 巻になって急にストーリーが動き出した! しかも Goblin は一般人の目に見えず、視認するには特別なアイテムなどが必要とのことで、序盤ではなかなかの危機に。そして活躍する姉の Mallory! 今回は、Jared と Simon は後先考えずに行動してしまう子供らしさと、Mallory の行動力が目立ったかな。まぁ子供達はまだ 9 歳だからなぁ。合理的な判断ができなくても仕方がない……。反面、姉は 1 巻では暴力的だったけど、今回は頼もしくて良かった。そして一番面白かったのは、夜遅くまで外出していた事に対する言い訳。正直に話しても信じてもらえないとはいえ、言い訳考えるのも大変だ (笑。

#3: Lucinda’s Secret
YL4.7
総語数9,838
邦訳エルフとの約束

姉 Mallory は Goblin の襲撃は妖精図鑑が原因と考え、Jared に図鑑を処分するように迫る。しかし Jared は図鑑を手放したくない。彼は、まずは屋敷の持ち主である大叔母 Lucinda に話を聞きに行こうと提案し、家族で大叔母の入院施設まで訪れ、話を聞くことに。すると、Lucinda は過去妖精と出会ったことがあり、図鑑を手に入れようとした妖精に襲われたという――。

屋敷の持ち主で精神病院に入院しているという Lucinda と遂に邂逅! しかし彼女の過去に体験した内容は思っていたよりも過酷というか、えげつない内容だった! まさか食べ物がねぇ……。その後、子供達の冒険により、なぜ図鑑が狙われているのかという点と、図鑑の著者 Arthur に関する情報がある程度明らかになり、ますます今後の展開が楽しみになって来た。あと、姉弟でケンカもしていたけど、ちゃんと大事に思っているのだというのは伝わってきて非常に良かったし、姉 Mallory が結構気に入って来たぞ。

#4: The Ironwood Tree
YL4.7
総語数9,444
邦訳ドワーフと鉄の森

エルフの魔の手から逃れた Jared 達は、しばらくは何事もなく日常を過ごしていた。しかし Mallory のフェンシングの試合の日、Jared は試合会場で自分と同じ姿の少年を見かける。そしてその後、Mallory が行方不明になってしまった!

Jared のそっくりさん? ドッペルゲンガーか? と思わせたところから姉 Mallory が行方不明と、序盤から大事件。そして前の巻がエルフだったからドワーフも出るかなと思っていたけど、やっぱりドワーフが出てきた。金属の犬を作るなどやはり技術力はスゴイ! それにしても、白雪姫のごとき Mallory は神々しかったな。ドワーフも良い趣味している (笑。最後にはラスボスも遂に登場し、物語は佳境。しかし人質になっていた人は誰なのかな? エルフに捕まっていた人は森から出られないって言っていたしな。どんな結末になるか楽しみだ……!

#5: The Wrath of Mulgarath
YL4.7
総語数13,043
邦訳オーガーの宮殿へ

ドワーフが住まう採石場から逃れてきた Jared 達 3 人は何とか家に辿り着く。しかし家はゴブリン達に荒らされ見るも無残な状況となっており、彼らの母も連れ去られていた! なんとか母親を連れ戻すため Mulgarath の根城に向かうことにした Jared は、敵の情報を得るために再びエルフ達に会いに行くことにした。

最初から盛り上がって面白かった! 今まで出番の無かったグリフィンや再登場したホブゴブリンも活躍したし、なによりエルフに捕まっていたあの人についても決着がついて良かった~。普通に解放されたのでは微妙だったし、悲しいけどあの結末で良かったかな。しかし Mulgarath の最後は意外な終わり方だったな (笑。変身にも弱点があったか……。

さて、これで全 5 巻読了。一部単語が難しいと思ったけど、語数が多くなくい会話が多かったので読みやすい良いシリーズだった。でも続編があるみたいだから、続けて読んでいくぞ。今度はどんな物語なのか楽しみだ。

Beyond the Spiderwick Chronicles (1 ~ 3 巻)

#1: The Nixie’s Song
YL4.7
総語数16,266
邦訳妖精図鑑、ふたたび

11 歳の少年 Nicholas は父の再婚で新しい母・姉と暮らすようになった。義理の姉 Laurie は妖精図鑑に夢中で、Nicholas を連れ妖精探しに家の周囲を探検する。ウンザリするNicholas だったが、偶然手にした四葉のクローバーの力で不思議な生物を発見してしまう。そしてそれは、これから起こる事件の幕開けだった――

まず、姉 Laurie が The Spiderwick Chronicles の内容を知っている事に驚いたが、時間軸的には Jared 達の冒険の後で、彼らが (Holly Black と Tony DiTerlizzi に頼んで) 妖精図鑑を出版した後という事らしい。それで妖精図鑑を読んだ Laurie が妖精に夢中になっているという状況。それで今回はニクシーとジャイアントが登場したけど、ジャイアントを落ち着かせるためにニクシーに一晩中歌っていてもらうとか、結構のんびりした感じだったな。いや、Nicholas 的にはいつジャイアントが暴れ始めるか分からないから気が気でなかったのだろうけども。全体的に、導入の展開がゆっくりだし、登場人物も自己中心的な人達ばかりであまり魅力を感じなかったかな。面白くなりそうな要素はあるし、Nicholas 達も人間的に成長してくれそうではあるので今後の展開に期待だ。

しかし Jared と Simon が普通に登場したのは驚いた! 新シリーズは完全に別主人公の話だと思っていたので、これはうれしいサプライズだったな~。Mallory も出て欲しい。

#2: A Giant Problem
YL4.7
総語数16,340
邦訳ジャイアント襲来

500 年の時を経て目覚め始めたジャイアントは数体だけではなかった。このままではフロリダ中が破壊されてしまうため、Jack は色々と Nicholas と Laurie に教えるが、2 人はイマイチ身が入らなかった。しかし遂に目覚め始めるジャイアントたち。Jack は負傷し、開発区の家は燃やされ、Nicholas の家も破壊されてしまったのだ――。

いやいやいや……え~!? そんな終わり方ある?? うーむ、なんという結末。4 人があんなに頑張ったのにな……。これは次巻も読まねば。しかしこの巻は面白かった! まぁ相変わらずイマイチ仲の良くない家族で少しイライラもしたが、結構リアルな感情のぶつけ合いにも感じたかな。次巻で良い感じにまとまってくれれば良いのだが。そして今回は兄 Julian とその恋人 Cindy も仲間に加え、4 人でがむしゃらに行動する様はカッコ良かったな。他の大人は誰も妖精を視認できないので、はたから見ると暴走しているようにしか見えず、ジャイアントを倒しても盛大に叱られると分かりながらも行動する様は胸に来るものがあったよ……。それに兄 Julian は、最初はいけ好かないヤツかなと思っていたけど、なかなかの好青年で良かった。一方、父は大変な状況だなぁ。開発区は破壊され、子供達は意味不明な行動をしているから、結構精神的に辛いと思うのよな。父も報われて欲しい……。あと、最後に Mallory が登場したのはうれしかった! やっぱり Jared と Simon、Mallory が 3 人揃っているのは良いな。次巻も登場しそうでありがたい。

#3: The Wyrm King
YL4.7
総語数20,747
邦訳ワーム・ドラゴンの王

ジャイアントの群れを対処した Nicholas 達に知らされたのは、ジャイアントよりも恐ろしい妖精、ワーム・ドラゴンが目覚めるという情報だった。そしてジャイアントはそのドラゴンに対処する手段でもあった。Nicholas 達はドラゴン対処のため、再びジャイアントを呼び戻そうと画策し始めたが、数々の困難と直面する――。

まさかジャイアント達への対処が裏目にでて、改めてワーム・ドラゴンにも対処しなくてはならないとは。序盤から終盤までずっとハラハラする面白い物語だった!妖精の行動が Nicholas やその家族たちだけではなく、関係ない市民にまで影響を与えていたし、建物も派手に破壊したから危機感やハラハラ具合は今シリーズの方が強かったな。描写も少し過激な部分があったし。あと、新たに家族になった 5 人の関係にも焦点が当たっていて、バラバラだった彼らがどのように家族となっていくのかという部分もテーマだったように思える。最後は上手くまとまってくれて何よりだ。終盤は微笑ましく読めて良かったよ。ただ、登場人物のほとんどが自己中心的だし、Nicholas や Laurie は無責任な発言・行動があったのでキャラクターの魅力がイマイチだったのが残念だったかな。でもまぁ面白かった!

シリーズ一覧

No.YL語数タイトル出版年
The Spiderwick Chronicles (51,516語)
14.79,844The Field Guide2003
24.69,347The Seeing Stone2003
34.79,838Lucinda’s Secret2003
44.79,444The Ironwood Tree2004
54.713,043The Wrath of Mulgarath2004
Beyond the Spiderwick Chronicles (53,353語)
14.716,266The Nixie’s Song2007
24.716,340A Giant Problem2008
34.720,747The Wyrm King2009
YL は自己評価
語数は AR BookFinder より (計104,869語)

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