科学を愛するマッド・サイエンティストな女の子が主役の「Franny K. Stein, Mad Scientist (キョーレツ科学者・フラニー)」 シリーズ。

絵も設定も独特ですが、突き抜けた破天荒さと意外な可愛らしさを持つ主人公が魅力の物語です。個人的にも結構気に入っていて、英語多読の題材にもおすすめです。

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Franny K. Stein, Mad Scientist シリーズ

概要

日本語タイトルキョーレツ科学者・フラニー
著者Jim Benton (ジム・ベントン)
巻数既刊10巻 (2022年1月時点)
YL2.7~2.9
語数各巻 約3,600~約6,500 語 (計46,278語)
突き抜けたマッド・サイエンティストな女の子

天才でマッド・サイエンティストな女の子 Franny が主役のコメディ作品。ランチの材料からクリーチャーを生み出すとか、牛を遺伝子改造して携帯性を高めるとか、破天荒さが突き抜けていて、彼女の思考・行動は非常に面白い。また、年相応の可愛らしさや、先生が危機に陥ったら自分のことは顧みず行動を起こす優しさを持ち合わせており、好感が持てるキャラクター性が魅力。

ワガママな子供やいじめっ子が登場しないこともあり、個人的には結構気に入っている作品。まぁ偶に Franny は性格が悪くなるのだけど、きちんと反省してくれるのであまり気にならなかった。個人的に気に入った巻は 1、5 巻で、次いで 2、4、6 、9、10 巻あたりかな。ただ、シリーズ序盤と中盤以降では少し雰囲気が違うので、最初に 1 ~ 2 巻を読むのがおすすめ。

狂気の科学者らしく難しい単語がちらほら使われるが、イラストが豊富で物語の流れは理解しやすいので一度は読んでみて欲しい。ただ、以下が要因で YL (読みやすさレベル) 以上に難しく感じるかも……。

  • 科学、自然、動物系の単語
  • 頻出語ではないが日常で使われる語彙、口語表現
  • 英語圏の文化に関連した描写 (学校生活など)
主な登場人物

基本的に主人公 Franny とその助手 Igor が中心となる物語。彼女達の名前の由来はフランケンシュタインとその助手イゴールだと思われる。次いで登場が多いのは母と担任の先生ぐらい。その他の家族や学友が登場することもあるが、頻度は多くはない。

Franny K. Stein個性的で天才な 7 歳の女の子。4人家族で両親と弟がいる
IgorFranny の助手となる雑種犬。2 巻から登場
Franny’s MomFranny の母。可愛いもの好き。ファーストネームは不明
Shelly学校の担任の先生。ありのままの Franny を受け入れてくれる

各巻の序盤のあらすじと簡単な感想

YL (読みやすさレベル) は自己評価。1 ~ 9巻の語数は AR BookFinder より。10 巻の語数は独自調べ
#1: Lunch Walks Among Us
YL2.8
総語数3,609
邦訳モンスターをやっつけろ!

Franny は巨大蜘蛛や蝙蝠、そして実験が大好きな女の子。彼女自身は学校や教師、学友が好きなのだが、強烈な個性を持つ故に学校に上手く馴染むことができない。そんな時、先生の助言を受け「実験」の一環として友達作りを行ってみようと試みる彼女だったが――。

表紙の絵やタイトルから、好き放題するお騒がせ系主人公なのかなと先入観を持っていたが、いざ読んでみると、Franny は個性的ではあるが友達を作りたいという普通の部分も持ち合わせている女の子だということが分かる。もっている人形の造形が違うとか、持って来たランチが自分だけサンドイッチではなかったとか、そんな些細なことを気にしてしまう辺りが可愛らしい。また、いざという時には自分の事を顧みずに行動でき、すぐこの主人公が好きになってしまった。いやしかし、Franny の表情が怖いと思う時もある (笑。

#2: Attack Of The 50-Ft. Cupid
YL2.9
総語数4,209
邦訳ドデカビームで大あばれ!

マッド・サイエンティストである Franny の研究は、家族にも友人にも真剣に受け取ってもらえない。せっかく作った「巨大化光線銃」も「物質化マシン」も理解されず落ち込む Franny。そんな彼女を見た母は、マッド・サイエンティストにはピッタリの助手を用意し、Franny を元気づけようとするが――。

今回は助手 Igor が初登場。役に立ちたいと思って行動しても、結果的に邪魔になってしまう悲しさよ……。この辺りは 1 巻で描かれた Franny の寂しさに通じる部分があったのではないかな。しかし Franny の技術力が半端ではなく、思わず「すげぇ……」とつぶやいてしまった。これで悪の心を持っていれば、世界の支配構造を破壊し、混沌の未来を作り上げる立派な世界の敵となったのだろうな (笑。

#3: The Invisible Fran
YL2.9
総語数4,177
邦訳透明フラニー大作戦!

学校の課題で自分たちの趣味を発表することになったクラス一同。Franny は学友の発表を聞き、マッド・サイエンスに興味を持つ人間が一人もいないことに驚く。そこで彼女はマッド・サイエンスの何たるかを知らしめるため、行動を起こすのであった――。

今回は Franny の思い込みが原因で騒動が起こる回。この巻の Franny は少し性格が悪く、自業自得で大変な目にあったが、それでも終わり方は良かった。これで彼女は多様な価値観を認められるようになったのかな。あと面白かったのは、先生たちが部屋で何をしているのかが描写されていたけど、面白すぎる。どんな学校だよ……。変わっているのは Franny だけではなかったのか。

#4: The Fran That Time Forgot
YL2.7
総語数3,740
邦訳タイムマシンで大暴走!

赤ん坊の頃からマッド・サイエンティストで、様々な発明をしてきた Franny。今回も独創的な発明をし、学校で開催される「科学フェア」で表彰されることに。しかし表彰式でミドルネームを笑われてしまった彼女は、笑われない名前にするために、大胆にも過去に行くことができないかと考える――。

今回は Franny K. Stein のミドルネームがキーとなって展開する話。名前については子供にはどうしようもないのだが、それでも自分でなんとかしようとする Franny の行動力がスゴイ。また、母に言われた諺 “You can’t have your cake and eat it too (相反する2つのことを同時にはできないという意味の諺)” からタイムマシンを思いつく彼女の発想力に感心してしまった。

#5: Frantastic Voyage
YL2.8
総語数4,571
邦訳ミクロフラニー危機一髪!

Franny の助手である犬の Igor は、Franny と共に色々と経験を積みマッド・サイエンスを学んできた。しかし Igor は失敗も多く、Franny は彼を発明から遠ざけるために、TV を利用しようと考えた。それが地球の危機につながるとも知らずに――。

Igor のミスが地球の危機につながるという、小さいようで大きな事件の物語。話の展開が見事でなかなか面白かった。また、過去の経験から自分の発明が悪の手に落ちたら世界が大変なことになるとし、その対策を考えるようになっていた Franny には成長を感じた。そもそも最初から危ない装置を作らなければ良いのでは、と自分にツッコんでいる所も面白かった。

#6: The Fran With Four Brains
YL2.7
総語数4,603
邦訳フラニー対ロボフラニー

勉強に研究に習い事に遊びと、様々な活動で絶えず忙しい Franny。あまりの忙しさに耐え切れなくなった彼女は、母にいくつかの習い事を休みたいと申し出るが、受け入れてもらえない。そこで彼女は、自分の分身となるロボットを 3 体生み出そうと考えるのだが――。

途中までは上手くいっていたのに、調子にのったことによりロボット達が反乱する。ありがちな展開ではあったけど良い物語だったし、助手の Igor が、Franny は 1 人でも十分なのに、4 倍に増やしても大丈夫なのかと心配する姿で笑ってしまった……! いやぁ、Franny と Igor は良いコンビになったよ。

#7: The Frandidate
YL2.9
総語数4,922
邦訳フラニー、大統領になる!

Franny は考えた。世界征服をしたら、今までできなかったことが邪魔されずにできる。人間にカンガルーの遺伝子を組み込めば移動に自動車が必要なくなるし、太陽に日焼け止めを塗れば、自分たちに日焼け止めを塗る必要がなくなる……。もちろん彼女は世界征服なんてするつもりは無かったのだが――。

自分が世界を征服するのではない、世界が自分をリーダーに選ぶのだ! という逆転の発想が面白い。有権者の票を獲得するための戦略を考える辺りは、まるで Franny が普通の政治家っぽいなぁなんて思ったり。ただ、交わした約束はキチンと果たそうとするあたりに、律儀な性格が垣間見えて良い。

#8: Bad Hair Day
YL2.7
総語数3,981
邦訳未翻訳

見た目にこだわらない Franny には、化粧、ヘアスタイル、可愛い服、どれもが不要で理解できない物だった。しかしある時、彼女は気づく。未知への探求も科学ではないのか、と。翌日から彼女の新たな研究が始まった――。

未知への探求で化粧や髪型を研究する積極性は素晴らしいが、やはり Franny の研究は方向性がアレなんだよなぁ。髪を巨大化して自由自在に操ってからの髪に反乱されるとか、見事なマッド・サイエンティストぶり……! 今回も Igor が活躍したのも良かった。また、第 8 巻は前巻から 10 年ほどたってから出版されたためか、物語冒頭にあったお馴染みの説明が少し変わっていて新鮮。でも絵や物語の雰囲気も少し変わったかな……。初期の頃の方が好き。

#9: Recipe for Disaster
YL2.7
総語数5,991
邦訳未翻訳

Franny は学校で、部活の資金集めとして手作りのお菓子を販売している友人に会った。しかしそのお菓子の出来が悪い……。そこで Franny が、もっと美味しいお菓子を作ってあげることに。しかし、普通のお菓子作りが向いていないと実感した彼女は、自分なりのやり方でお菓子を作ることにした――。

お菓子が作れないのであれば、お菓子が作れるロボットを作れば良いじゃない、という何ともまぁ相変わらずの発想……! 様々な発明をしてきた Franny が料理ができないとは思えないけど、きっと余計なアレンジをしてしまうのだろうな (笑。そして作ったお菓子にハマっていく子供達が、危ない薬に手を出した人間のようで、若干ホラーっぽい感じが面白かった。

#10: Mood Science
YL2.7
総語数6,475
邦訳未翻訳

合成マシンを発明し、喜々として実験を繰り返していた Franny。しかしある時、実験が予想外の結果となり癇癪を起こし、Igor に八つ当たりしてしまう。反省した Franny は彼に謝ろうとするが感情が邪魔になりうまくいかない。そこで彼女は自分の不機嫌な感情を取り除こうと、自分自身を分解することにした――。

怒りや恐怖といった感情を分離した Franny の冷静なコメントとツッコミが面白い。まぁ無感情というより、無気力という感じではあるが、なかなか味わい深い表情だった。最後の街のパニックの解決策もかなり力技でスゴイが、別の問題が発生しそうである。いいんか、それで (笑。

Franny K. Stein, Mad Scientist シリーズ 語数・YL 一覧

No.YL語数タイトル出版年
12.83,609Lunch Walks Among Us2003
22.94,209Attack Of The 50-Ft. Cupid2004
32.94,177The Invisible Fran2004
42.73,740The Fran That Time Forgot2005
52.84,571Frantastic Voyage2005
62.74,603The Fran With Four Brains2006
72.84,922The Frandidate2008
82.73,981Bad Hair Day2019
92.75,991Recipe for Disaster2020
102.76,475Mood Science2021
YL は自己評価
1 ~ 9巻の語数は AR BookFinder より。10 巻の語数は独自調べ (計46,278語)

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