Steins;Gate に続く科学アドベンチャー Robotics;Notes (ロボティクス・ノーツ)。

プレイしようと思いつつタイミングを逃して数年経ってしまったのですが、2020年に海外版が発売されたので英語の勉強がてらプレイしました!

北米版 Robotics;Notes Elite (ロボティクス・ノーツ エリート)

概要

世界を救うのはヒーローじゃない―オタクだ。

英語タイトルRobotics;Notes Elite
ジャンル拡張科学アドベンチャー
私のプレイ時間約50時間 (トロコン)
機種PC (Steam)PS4、Switch
ロボット × サスペンス

ロボットや拡張現実 (AR) が当たり前となった2019年。廃部寸前の中央種子島高校「ロボ部」に属する八潮海翔は偶然、世界を巻き込む陰謀の告発文「君島レポート」を見つけてしまう。 格闘ゲーム「キルバラ」にしか興味が無い海翔だったが、成り行きで巨大ロボット制作に奮闘する幼馴染をサポートしつつ君島レポートの謎を探り始める。その行為により、大きな思惑に乗せられることになることを知らぬまま――。

科学アドベンチャーシリーズ第3弾

本作は妄想科学ADV「Chaos;Head」、想定科学ADV「Steins;Gate」に続くシリーズ第3弾、拡張科学ADV「Robotics;Notes」の追加要素版。巨大ロボットを製作する5人の高校生を中心とした青春ストーリーに陰謀論が絡んでくる物語で、シリーズの中では爽やかな雰囲気が強い。ちなみに過去作の世界設定や人物が少し登場するので、最低限 Steins;Gate を先にプレイしておいた方が楽しめる。

個人的にはシリーズ2作目の Steins;Gate と4作目の Chaos;Child の方がオススメで、さらにシリーズを楽しみたい場合は本作をプレイしてみ良いかと思う。

英語でプレイするには

2020年に海外版が発売されたので、Steam版かPS4/Switchの北米版ソフトを購入すれば英語字幕でプレイ可能 (音声は日本語のみ)。なお、パッケージ版は続編との同梱版 (Elite & Dash Double Pack) しかない模様。DL版は個別購入できる。

ちなみに Steam版を英語字幕でプレイするには、Steam クライアントのライブラリ上で Robotics;Note のプロパティを表示し、言語を英語に変えてからインストールする必要がある。

熱血&爽やかなストーリーは好ましい

高校生が奮闘する青春ストーリー

イメージイラストやパッケージ絵では青空を背景とした少年少女たちの元気な姿が描かれており、爽やかで個人的にかなり好き。ストーリーも基本は高校の弱小ロボ部がなんとか成果を出そうと悪戦苦闘するもので、熱血あり涙あり根性ありで微笑ましいものがある。巨大ロボット設計の描写やヒロインの1人である神代フラウが関わる陰謀論の話は結構面白く、終盤の盛り上がる熱血ストーリーも良かった。

他の科学アドベンチャー作品よりも残酷・ホラー要素が少ないので (無いわけではない)、精神的に楽に読めたのもありがたかった。

冗長でテンポが悪いのは残念

物語を面白くする要素は色々あるのだが、そこをダメにしてしまう点も多く感じた。

一番不満に思ったのは文章が冗長すぎること。ゲームを初めてから4~5時間ほどは退屈な説明・日常話が続き、会話間でも地の文が挟み込まれテンポが悪く感じた。これは自分が (日本語よりも格段に読むスピードが遅い) 英語でプレイしたことも原因だったと思うが、それにしても序盤はつまらなくて辛かった……。

また、物語の繋がりが悪く、ご都合主義も多いと感じた。これは主人公の完全に受け身の性格に起因したように思える。例えば、「目的Aを実現するために、途中で生じた障害B、C、Dを解決していく」という展開なら話が分かりやすいのだが、本作の主人公は自発的に動かないので、偶々発生した出来事に巻き込まれていく形になっている。生じた事態にただ対処していくだけなので、1つ1つの出来事は関連性を感じず印象に残りづらい。さらに1つの出来事で判明する情報が少なく、その分単発の出来事を多く生じていたので、結果として物語が間延びしているように感じた。

このテンポと繋がりの悪さが無ければもっと物語に熱中できたかなと思う。

青臭い部長に未熟な部員、(たまに) 頼れる大人達。

巨大ロボット制作に向けて団結していく様は感動

廃部寸前のロボ部に部員や協力者が増え、巨大ロボットを制作していくというストーリー自体は魅力的。また、大人達にも出番があるのは非常に良かった。やはり有能でもロボ部員達はまだ子供、金銭や技術に限界があり大人に頼らなければならないという面が描写されたのは好みの展開だった。

主人公の八汐海翔と幼馴染で部長の瀬乃宮あき穂はお互いを大切にしており、互いを思いやる描写は微笑ましくて好きだった。全体的に、海翔とあき穂のお互いを理解している会話、ツン:デレ=9:1ぐらいのメガネ男子・日高昴の態度、金髪少女・神代フラウのネットスラングなどは結構楽しく読めた。

性格難の部員達……

最初はバラバラだった部員達が力を合わせ困難に立ち向かう、というシチュエーション自体は面白いのだが、実は部員達の性格は難がありすぎてイライラさせられる事も。海翔は無気力過ぎ、あき穂は単細胞過ぎ、昴は正論振りかざし過ぎ、フラウはコミュ障過ぎ、空手少女・淳和はメンタル弱すぎと、彼らは少々どころではない厄介さを持ち合わせている。

特に海翔は無気力・非協力すぎて印象がかなり悪いタイプの主人公。合わないと思ったプレイヤーも多い様子。個人的には、彼らはまだ未熟で青臭い高校生と捉え、感情移入というより成長を見守るような視点で読み進めたので性格についてはそこまで気にならなかったが、プレイ前に認識しておいた方が良い点である。

ちなみにロボ部員の面々は続編 (Dash) では精神的成長を遂げた姿が描かれており、海翔についてはかなりの好青年になっていた。良かった。

結論: 面白さはあるが不満点も多い

話を追うだけならアニメで良いかも

なんだかんだプレイして良かったと思えるほどには楽しめたが、ビジュアルノベルとしては色々と読み進め辛い特徴が多いのも事実。もしプレイするなら期待しすぎない方が良い。

私はゲームクリア後にアニメも見てみたが、アニメの方が物語のテンポやロボ部員の性格が改善されていたので見やすいと思った。ゲームの細かい描写をカットしすぎて説明不足や物足りなさもあったが、それでもゲームより面白いと感じたので、科学アドベンチャーシリーズの話は把握しておきたいならアニメでも良いと思う。北米版BD/DVDなら英語で見れるし。

ネットスラングの英訳は難しいが面白い

一番辞書で調べたのは神代フラウの中二セリフだったように思える。彼女は2010年前後のネットスラングを使うので、例えば常考 (常識的に考えて) の英訳で SMH (shaking my head。頭を横に振ってあきれている状態を表す) が出てくる。同じようにネットスラングを多用していた Steins;Gate のダルより読み辛かった印象ある。翻訳者が違うのかな……? 多彩で面白くはあった。

物足りなさは続編で補完

ラストはスッキリ終わるので爽やかだったが、描写が淡泊で物足りなさを感じた。だが続編 DaSH は後日談を兼ねた内容になっており、昴の進路や天王寺綯の JAXA 入りの経緯など気になっていた点も知れたので、最終的には満足できた。本作が気に入ったら続編を続けてプレイするのはオススメ。

北米版 Robotics;Notes DaSH (ロボティクス・ノーツ ダッシュ)

概要

何度だって世界を救うのは―オタクだ。

英語タイトルRobotics;Notes DaSH
ジャンル拡張科学アドベンチャー
私のプレイ時間約30時間 (トロコン)
機種PC (Steam)PS4、Switch
かつての部員達のその後、そして新たなる事件

あの事件から半年。ロボ部員3年生は学校を卒業し各々の生活を営んでいた。宇宙飛行士を目指し、島を出て浪人中の八汐海翔は久しぶりに種子島に帰省したが、彼は天王寺綯を通じ橋田至という男に出会う。かつての部員達や橋田至と共に夏祭りを楽しむ海斗だったが異常な状況に遭遇する。それはかつてのように世界を混乱に陥れようとする事件の前触れであった――。

ラボメンとロボ部を繋ぐ物語

本作一番のポイントはやはり Steins;Gate の登場人物である橋田至 (通称ダル) が登場すること。Steins;Gate の10年後なので29歳の妻子持ち。物語はとある用事で彼が種子島にやってきたところから始まり、天王寺綯を介することでダルとロボ部の面々が知り合う事となる。つまり、Steins;Gate のラボメンと Robotics;Notes のロボ部の出会いのキッカケの物語とも言え、両作のファンには嬉しい内容となっている。

ちなみに物語の視点はダル5割、八汐海翔3割、その他2割ぐらいで、ダルと海翔のダブル主人公的な感じである。

英語でプレイするには

Robotics;Notes Elite と同様に海外でも発売されたので、やはりSteam版かPS4/Switchの北米版ソフトを購入すれば英語字幕でプレイ可能 (音声は日本語のみ)。パッケージ版は同梱版 (Elite & Dash Double Pack) しかない模様で、DL版は個別購入できるのも Elite と同じ。

気になっていた後日談が楽しめる

成長したロボ部員達

厄介な性格だったロボ部の面々だったが、本編 (Elite) の出来事を通じて精神的に成長した姿を本作 DaSH で拝むことができる。部員同士でも仲が良くなっており微笑ましい。また、本編ラストで色々気になっていた、以下について知ることができる。

  • 卒業したロボ部3年生の進路
  • 日高昴と父の関係、昴の進路
  • フラウはロボ部についてどう思っているのか
  • 愛理の状況
  • 瀬乃宮みさ希はどうなったのか
  • 天王寺綯がJAXAに入った経緯

この中でも特に日高昴のシナリオはかなり面白く、大人となったダルの活躍も光っていたのでオススメ。

文章の読みやすさも改善

本編と比べ説明的な文章が減りテンポは良くなっている。さらに最初から登場人物に馴染みがあるので、物語の導入から面白さを感じるなど、本編と比較してだいぶ読みやすくなっている。良かった……!

毒にも薬にもなるダル

大人な部分と HENTAI 紳士が混ざっているダル

本作の大半はダル視点で進むが、彼は大人な部分と HENTAI が混在している癖の強い人物。Steins;Gate 本編の時代よりも頼れる大人になったなと感慨深いが、相も変わらず HENTAI で辟易させられる事も結構ある。それが彼の個性であり魅力の一部でもあるが、HENTAI 成分は特に面白く無いのでもう少し自重してもらいたいところ……。成長した海翔は好青年となっているので、むしろダルに振り回される海翔に癒されたりされなかったり。

ラボメンの現状が垣間見え楽しい

ダルのポケコンからツイぽを見ることができるので、ラボメンのやり取りを見ることができる。彼らは本作に直接登場するわけではないが、10年後のラボメンの姿が垣間見え面白い。この辺りのファンサービスは素直に嬉しかった……!

満足感はあるが内容的にはファンディスク+α か

面白いが過度な期待は禁物

本作は文章のテンポが改善されており読みやすく、後日談やダルやロボ部が活躍するシリアスな事件も起こり面白い。しかし盛り上がりは本編ほどではなく、続編というより本編のファンディスク+αといった内容。過度な期待は禁物だが、本編が好きでもっとロボ部の話しを知りたいという場合にはオススメできる。

今後の展開に期待

科学アドベンチャーシリーズの展開次第では、今後ラボメンとロボ部が協力する物語もあり得る。その時、本作が彼らが知り合うキッカケとなった話となるので、シリーズが好きで今後も追いかけていきたい自分としてはプレイして良かった。Robotics;Notes 本編はアニメで見たという場合でも、DaSH をプレイしてみても良いのではと思う。