定価 500 円ながら評価が高かったアドベンチャーゲーム「シロナガス島への帰還」が気になったのでプレイしました。
スゴ腕探偵とコミュ障天才少女がアラスカ近海の孤島に潜入調査、というホラー要素ありのミステリー・サスペンス物。クリア後はかなりの満足感を得られました!
英語版 シロナガス島への帰還
概要
私は帰還する あの忌まわしきシロナガス島へ
英語タイトル | Return to Shironagasu Island |
ジャンル | ポイント&クリック型ミステリーアドベンチャー |
私のプレイ時間 | 約18時間 (全実績解除。本編: 約15時間、Extraシナリオ: 約3時間) |
機種 | PC (Steam、他) |
秘密を暴きに孤島へ潜入
大富豪の令嬢から依頼を受けたニューヨーク在住の探偵・池田 戦 (いけだ せん) は、天才かつコミュ障の少女・出雲崎 ねね子 (いずもざき ねねこ) と共にアラスカ近海にある孤島「シロナガス島」へと潜入する。しかし、そこで起きる奇怪な殺人事件に巻き込まれ、正体不明の生物と遭遇する。果たして彼らは島に隠された真実を暴き、無事生還することはできるのか―-。
英語でプレイするには
Steam 版は多言語対応しているので英語字幕でプレイできる。Amazon でパッケージ版も販売されているが、そちらが多言語対応しているかは不明。
ゲーム内容
基本はノベルゲーム
ポイント&クリック型のイベントもある
基本的にはノベルゲームのように文字を読み進めていくだけだが、たまに選択肢も出てくる。場合によっては選択肢次第でゲームオーバーになりタイトル画面に戻されるので、定期的なセーブは必須。選択肢が出るごとにセーブデータを分けて保存しておくと良い。
また、定期的にポイント & クリック型の人探や証拠・痕跡探しなどが挟まれる。と言っても、背景絵の疑わしい箇所をクリックして主人公の反応を読むだけなので簡単。ただ、あらゆる箇所を何回もクリックして調べないといけない時もあるのでちょっと面倒でもある。
時限式のイベントで緊張感アップ
失敗するとゲームオーバー……
制限時間内に特定の行動を強いられる時限式のイベントも時折行われる。画面上部に残り時間が表示され、時間内に解毒薬を探したり爆弾の解体をしたりといくつか種類がある。厳しいのは、文章を読んでいる最中も残り時間が減っていくこと。のんびり英文を読んでいると普通に制限時間をオーバーしてゲームオーバーになるので、気合を入れて読み進める必要がある。これは緊張感を持てる良いシステムだと思った。
ぶっちゃけ私は英文を読むのが遅く、時間に間に合わなくてゲームオーバーになったことがある……。幸いゲームオーバー後、直前からやり直せたので事なきを得たが。危なかった……!
英語の題材として
テンポが良く読みやすい
会話のテンポが良い上に、地の文もシンプルにまとまっているので全体的に英文は読みやすい。人体の臓器や動物の学名、薬品名など難単語もたまに出るが、ストーリー上では重要ではないので調べなくてもさほど困らないハズ。
遭遇した表現を一部紹介
out of the blue
(思いもかけず、いきなり)
突然呼び出してすまない、と屋敷のオーナーの娘 Ada が謝罪した場面。
“blue” は青空のことで、「空から突然現れたように」というニュアンス。
on the grapevine / through the grapevine
(人づてに、口コミで、噂で)
主人公が見知らぬ人に自己紹介をしたら、あなたの事は噂で聞き及んでいたと Akira が返答した場面。
“grapevine” はブドウの木のツルのこと。電信線があちこちに伸びて網のようになったブドウのツルに似ていたかららしい。
under the weather
(体調が良くない)
Mr. Higgins の体調が悪いため、自分が代理で来たと主人公が発言した場面。
正確な由来は不明ながら、「悪天候で船酔いになり具合が悪くなることから」という説がある。
a long face
(浮かない顔、がっかりした顔)
悲惨な話を聞いた主人公を見て、Aurora が「あなたが浮かない顔をする必要はない」と発言した場面。
相手を気遣って「どうして浮かない顔をしているの?」と聞くときは “”Why the long face?”” という言い方が定番。
take a rain check
(またの機会にする)
バーカウンターで飲まないかと Jacob に誘われたが、またの機会にすると主人公が断った場面。
“rain check” は雨天中止になった野外イベント・試合の雨天順延券のこと。誘いを断る場合の社交辞令として使うことも多い。
lie through one's teeth
(しらじらしい嘘をつく、ぬけぬけと嘘をつく)
状況を尋ねてきた Neneko に対してしらばっくれた回答をしたら、「嘘を付いているように聞こえる」と返された場面。
話をしている時の歯の隙間から嘘が透けて感じられる、というイメージ。
with a fine-tooth comb
(綿密に、徹底的に)
「部屋で見つけたバインダーを細かく調査すれば何か有用な情報が見つかるかもしれない (けど全部見る気にはなれない)」と Neneko が思った場面。
“a fine-tooth comb” (目の細かい櫛) を使って髪の毛のシラミを徹底的にすき取る、というイメージ。
give someone the benefit of the doubt
(とりあえず信じておく)
Alex の発言内容は疑わしいが、ひとまず信じておこうと 主人公が発言した場面。
本当に信じるのではなく、疑わしいが一先ずそれでよしとしておく、という感じ。
By Jove
(本当に、誓って)
主人公が殺人の犯行手口について閃いた場面。
驚きや強調を表す感嘆詞。”God” の代わりにローマ神話のジュピター (ユピテル) “Jove” を代用した表現。ちなみにセリフの後半にある “modus operandi” は「手口、やり方」という意味。
全体的な感想
低価格ながらも満足度は高い
最初から最後まで面白さが持続
最初から最後まで楽しめた本作であったが、個人的に感じた魅力は以下の通り。
- 会話も地の文もテンポが良い
- 時限式イベントは緊張感があって良い
- 丁寧な伏線回収
- CG絵が豊富
- 価格が安い
ミステリー要素があり犯人当てがあったし、ドキッとするホラー要素も良かったが、個人的に一番良かったのはゲームを始めて最初からテンポよくドンドン読み進められたこと。序盤は (面白くない) 日常描写や背景説明が多いノベル・アドベンチャーゲームがある中、本作は序盤でも無駄な説明・長い地の文が無いので楽しく読み進めることができた。
また、序盤の不可解な現象や時限式イベントを失敗した時の演出など疑問に思っていたことに対してキチンとその理由が判明するし、イベント絵が豊富で視覚的にも分かりやすく良かった。そして何よりこのクオリティで定価 500 円というのが素晴らしい。セールならさらに安くなるし。
不満点をあえて挙げるなら
とにかく価格が安く内容が面白かったので基本的に満足しているが、あえて不満点を挙げるなら以下。これらは単純に私の好みの問題なのだが。
- 主人公は年齢の割に落ち着き・渋さが足りない
- いかにも創作物っぽい Neneko の能力・性格
- ポイント&クリック要素はいらなかった
- ラッキースケベなど一部の展開が古典的
- アスベクト比 4:3 だと古臭く感じる
まず、主人公に落ち着きや渋さが感じられず学生のようなノリを感じたことがチラホラ……。立ち絵からすると相応の年齢に見えるし、作中で語られる経歴からしてももう少し渋くあって欲しかった。また、Neneko は一度見たものを完全に記憶できる能力を持ち、20か国語を話せるマルチリンガルでプログラミングもできるが極度のコミュ障で怖がりと、特徴が山盛りすぎる。現実感がない人物像だとリアリティを感じられず冷めてしまう部分はあった……。
ポイント&クリックは別に悪くはなかったが、ストーリーの続きが早く読みたいのにポイント&クリックの場面になることがあったので、無駄に焦らされて蛇足に感じてしまった。そんなに重要な要素にも感じなかったので無くても良かったのではと思う。
誰かがシャワーを浴びている部屋に突撃するとか、必要性を感じないシーンがあったのも残念。本作に限らないが、ラッキースケベはそのシーンを見せるためにシナリオの流れが強引に歪められた感があるので好きではない。また、昨今アスペクト比 4:3 のゲームは珍しくなってきたので古臭く感じた。最初のこのゲームを見つけた時は何年前のゲームだろうかと思ってしまったし、やはり 16:9 の方がうれしかった。
Extra シナリオは癖が強い
本編クリア後、タイトルから Extra シナリオを選べるようになる。本編の数か月後から始まるが、少し方向性が変わってホラー & 超常現象の話し。ただ、Extra シナリオは本編で感じた不満点が前面に押し出された感じのノリで、私の趣味に合わなかったかな……。上記に記載した不満点が気にならないなら Extra シナリオも楽しめるとは思うし、本編の内容とは直接関係ないのでプレイする/しないは自由なのだが。
いずれにせよ、本編は間違いなく面白く、英文も比較的読みやすいので英語多読の題材としてもオススメ。また、他のオススメ作品については「英語ノベルゲーム19選」を参考に。