Detroit: Become Human (デトロイト ビカム ヒューマン)
概要
それは命か、それともモノか。
英語タイトル | Detroit: Become Human |
ジャンル | オープンシナリオ・アドベンチャー |
私のプレイ時間 | 約20時間 (初見で1周目クリア: 約8時間。攻略情報見ながら2周目: 約12時間) |
機種 | PC (Steam)、PS4 |
1つの選択が、まったく異なる未来に繋がる
2038年のデトロイト。人工知能やロボット工学が目覚ましい進歩を遂げ、人間同等の外見・知性を持つアンドロイドが当たり前となった時代。様々な環境でアンドロイドが活躍する一方、アンドロイドの普及で職にあぶれた者が増え、社会には新たな軋轢が生じていた。そんな社会情勢の中、まるで自意識を持ったかのような振る舞いをするアンドロイド「変異体」が徐々に増えていく。今まで道具として雑な扱いを受けてきたアンドロイド達が意思や感情を持ったとすれば、果たして人間は、そしてアンドロイド達はどのような未来に進むのであろうか――。
英語でプレイするには
多言語対応しているので日英でプレイ可能。音声・字幕の言語はゲーム内のオプションから変更できる。
ゲームの特徴
基本操作は普通のアドベンチャーゲーム
最新テクノロジー備えた主人公
本作の主人公は以下 3 体のアンドロイド。基本的な操作は難しくなく、単純な移動やスティックの操作、時限式のボタン入力 (QTE) があるぐらい。
- カーラ: サポーターとして産み出されたアンドロイド
- コナー: 捜査補佐として事件を調査するアンドロイド
- マーカス: 障害を持つ芸術家を補佐するアンドロイド
ちなみにアンドロイドたちは人間にはできない機能を備えている。たとえば捜査官であるコナーは状況証拠から犯行現場の再現が可能で、的確に犯人を追い詰めていくことができるが、未来的な機能でなかなか面白い。見た目は人間でもやはりアンドロイドなのだなと感じられる要素でもある。
1つの選択が、まったく異なる未来に繋がる
ゲームオーバーは存在しない
オープンシナリオ・アドベンチャーと呼ばれているだけあり、本作には細かい分岐が大量に存在し、ゲームオーバーも存在しない。例え主人公の誰かが途中で死亡しても物語は続き、何かしらの結末を迎えるのだ。暴力的に物事を解決するか否か、仲間を助けるか否か、ミッションに成功するか否かなど、一つ一つの行動が先の展開に影響を与えていくので、プレイする人によって全く異なる展開になる。
各章をクリアすると、フローチャートが表示され自分の行動を振り返ることができるが、その行動を取った人はゲームプレイヤーの中で何パーセントいるのかという情報も確認することができる。これを見るのが意外に楽しく、レア度の高い行動を取った時はなんとなくうれしくなる……。このような特徴があるため、本作は自分でプレイするのはもちろん楽しいのだが、他の人のプレイ動画や感想を見るのも楽しい。
英語の題材として
英語は難しくないが
会話は自動で進むので理解するスピードは求められる
本作はめんどくさい説明や長々とした会話はほとんど無い。会話内容も難しくなく、英文自体は簡単な方だと感じた。難点は、会話がオート進行なのと、しばしば表示される選択肢には制限時間が設けられている事。のんびりしていると会話についていけないので、ある程度読み聞きするスピードは求められる。
フローチャートから任意のシナリオをやり直すこともできるし、いざとなれば音声を日本語にすれば良いので、英語音声・英語字幕で試しにプレイしてみるのは悪くないはず。ただ、プレイ時間にたいしてセリフ量がそこまで多くないので、英語の勉強という観点では効率が良いゲームではなかったかな。同じようなジャンルのゲームであれば、Life is Strange の方が勉強に向いていたと思う。
感想 (ネタバレあり)
見た目も振る舞いも人間、たが扱いは道具
店内に商品として飾られているアンドロイド
本作の序盤では、道具として扱われていることを象徴するかのように、アンドロイドが店内にディスプレイされているシーンがあった。プレイヤーとしては人間と同等の姿をした彼らが店内に飾られている姿にはぞっとさせられるものがあったが、ゲームの世界観的にはそれが当たり前なのだと認識させられた良い場面。
全体的に、アンドロイド普及によってデトロイトにもたらされた不利益や違和感などはうまく表現されていたように思う。例えば以下のようなシーンがあったが、これは実際にアンドロイドが普及したらいかにもありえそうだと感じて感心した。
- アンドロイドスパイ説を唱える雑誌
- アンドロイドは物忘れはしないと愚痴 (?) を言う老人
- アンドロイドは出ていけというメッセ―ジを段ボールに書いて飾っているホームレス
- 息子である自分よりも従順なアンドロイドを優先することに憤る男性
- アンドロイドに職を追われ、反アンドロイドとして活動する市民
- 仕切りをつけ、人間とアンドロイドの搭乗場所を隔離しているバス
アンドロイドの姿や機能を人間に似せすぎるとモラル的にも悪影響がありそうだし、実際に作るならもっとロボット然とした姿をした方が良いのかもしれないな……、とかなんやかんや考えてしまう。うーん、無駄に考えさせられる部分があるゲームはやはり面白いな。
変異体となった主人公たち
1 周目クリア後の感想
1 周目は攻略情報をみずに初見プレイ。
カーラについてだが、実は 1 周目では、彼女は序盤のシナリオですぐに破壊されてしまったのでメインストーリーとは全く無関係となってしまった。アンドロイドとしての職務を果たすべく命令に忠実に行動しようとした結果で、別に後悔はないのだが。生き残っていたらどうシナリオに絡んできたのだろうか……?
コナーの 1 周目は、ハンクと中を深めたいが任務は全うしたいという気持ちがあり、選んだ選択肢が中途半端になってしまったなと反省。人間とマシンを行ったり来たりになってしまった。終盤まで生存できたのは良かったが、ハンクを倒してしまったし。いや、倒すつもりは無かったのだが。向かってきた君が悪いのだよ、ハンク……。それはそれとして、操作していて一番面白かったのはコナー。ハンクとのやり取りも良かったし、現場に残った証拠から犯行時の状況を再現するという機能には驚いた。高性能アンドロイドを操作している感じがあってとても良かった。
マーカスは最初から最後まで一貫した態度を貫けた。アンドロイドの解放をうたってリーダーとなり、人間社会に対して権利を平和的に主張するという、一番主人公のような活躍ができて満足。恋人となったノースはやたらと好戦的だったが、数に劣るアンドロイドが攻撃的にでても返り討ちにあって同族もすべて破壊されるというオチしか見えないし。最後の最後にコナーに倒されたのはアレだったが……。おいコナー!
ただ、アンドロイドが本当に自我を持ったのかという点については懐疑的だったりする。単にプログラムされた反応を返しているだけという疑問は絶えず残るし。マーカスがアンドロイドを変異体に転換している様子については、実は単なる洗脳プログラムを植え付けていただけではないかという疑問すらある。自我があるというのであれば全員の行動が画一的すぎる気はする。
全体のシナリオ的には、基本的に「人間は酷くて、アンドロイドは可哀そう」という立場からしか描かれなかったのは残念。ほとんどのアンドロイドの自我の獲得が虐待による恐怖がトリガーになっていたが、幸福や歓喜、心配や欲望などもっと自我を獲得するパターンが豊富にあればと思わなくもない。でも物語が複雑になるからゲームとしては難しいかもしれないか……。
2 周目クリア後の感想
2 周目は攻略情報をみながら最初からやり直し全員生存クリアを目指した。カーラが早期リタイアしないので 1 周目よりシナリオ量が増えたことと、周回に向いていない酷いシステムだったおかげで 2 周目の方が1周目より4時間ほど時間が掛かってしまった。全員生存クリアは 1 周目で目指した方向性と同じだったのでコナーとマーカスのシナリオはほぼ同じルートを辿ったが、シーンスキップもセリフ送りもできず。プレイ済みのシナリオでも全て見ないといけないとかほんと酷い……。
カーラのシナリオ自体は大変面白かった。基本的に逃亡者として常に逃げ回らなければならないため緊迫感があって良かったが、特に良かったのは捜査官として変異体を追うコナーと逃亡者として逃げるカーラのチェイスシーン。警察から逃げるカーラを操作した直後、追う側のコナーに操作が切り替わってカーラを追いつめる場所なんかは、どちらの目的を優先すれば良いのか混乱してしまった。
また、カーラのシナリオを終盤ではバスでカナダに向かう道を選んだが、途中で発生したバスのチケットを返すか返さないかの選択しは滅茶苦茶悩んでしまった。できれば誰も不幸にはしたくなかったが、これだけはどうしようもなかったので、ありがたく頂戴したが……。これだけは最後まで心残りだった。
カーラの最終シナリオでは道中で1回失敗してそのシナリオの最初からやり直したこともあり、最終的に全員生存エンドを迎えた時はかなりの達成感を得られたし、海外ドラマを見ているかのようなストーリーは面白く満足できたゲームだった。
他のノベル・アドベンチャーゲームにも興味があれば「英語ノベルゲーム19選」を参考に。