食糧危機により人口抑制を始めた政府、そして政府から存在を否定されたシャドウ・チルドレン。そんな過酷な人生を送る子供達の運命を描くのがこの「Shadow Children シリーズ」。
第 1 巻が個人的に大ヒットで、続きが気になったので全 7 冊読みました。全巻の中で一番面白いと感じたのは結局第 1 巻でしたが、全体的には面白かったです!
Shadow Children シリーズ
概要
日本語タイトル | シャドウ・チルドレン |
著者 | Margaret Peterson Haddix (マーガレット・ピーターソン・ハディックス) |
巻数 | 全7巻 |
YL | 4.9~5.1 |
語数 | 各巻 約32,100~約48,500語 (計272,624語) |
絶対に見つかってはいけない
干ばつの影響で人口抑制を行い始めた米国。子供の数は 2 人以下と制限した政府の下、少年ルークはとある家庭の三男として生を受けた。しかし政府に見つかると命を奪われるため、”存在しない子供” として半ば家に閉じ込められる形で育つ。兄たちとは異なり不自由な生活を強いられ、自らの人生に疑問を感じ始めた Luke。そんな彼はある日、向かいの家に住む 3 人目と思しき子供の姿を見つけるが――。
ディストピアとなった米国において、虐げられる存在となったシャドウ・チルドレン達の運命を描いている本シリーズ。全体的に暗い雰囲気だったけど、子供達の運命が気になってどんどん読み進められた! 全体的な感想は以下。
- 閉鎖環境で生きてきたシャドウ・チルドレン達が苦悩し、成長する様が面白い
- 全体的に暗い雰囲気。外界におびえる内面の描写や尋問や投獄の描写が苦しくて良い
- 新たな登場人物が出るたびに、敵か味方か分からなくて楽しい!
- シリーズ後半は少しご都合主義な展開が増えるが、最終巻まで先が読めないストーリー展開は面白い
- 2 巻以降は、物語前半がイマイチ面白くない。後半は一気に面白くなるのだが……
- シリーズ後半の方が描写が過激で、少し血なまぐさい
- 各巻に登場する人物は少ないので、人物関係が把握しやすい
- 語彙は少し難しめだが、崩れた表現や口語は少な目で読みやすい
ディストピアな世界を舞台とし、閉鎖された環境で育った12 歳前後の子供が何人も登場するため全体的な雰囲気は暗め。特に家やその周辺から出たことがない子供の心理描写が多く、内向的なセリフや行動も多い。しかしながら心理描写が巧みで、道を歩くだけでも恐怖を感じるような子供達が恐怖を抑え、行動しようとする様はドキドキしながら読み進められた……!
その他に面白いと思った要素は、新たな登場した人物が敵か味方か分からず疑心暗鬼になってしまう点。シャドウ・チルドレンの存在がバレると子供やその家までもが人口警察によって処罰されてしまうし、近隣の住民達による密告の恐れもあるので、友好的に見える人物にも簡単に信用することができない。そんな状況で新たな登場人物が出てきたとき、果たして信用できるのか、それともスパイか何かなのか、そんなことを自分でも考えながら読み進められたのは、面白い読書体験だったかな。
残念だったのは、2 巻以降のストーリー構成。どの巻も後半はシャドウ・チルドレンの成長が見られる良い展開だったけど、前半の展開は後ろ向きすぎてイマイチだったかな……。もちろん主人公は今まで閉鎖環境で過ごしてきた子供達なので、怖い・やりたくないという気持ちが前面に出てくるのは当たり前なのだけど、その後ろ向きな描写が長すぎ・クド過ぎ。結果として、物語前半は冗長で面白みが少ないということが多かった。まぁ前半の溜めがあったからこそ、後半の展開がより面白く感じたという部分はあるのだけど、もうちょっとテンポが良ければ読みやすかったかな……。あと、ストーリー全体の構成も、後半は今一つに感じた部分がいくつか。少々ご都合主義的な部分もあったし。まぁそれでも、最終巻に到達するまで物語の結末が予想できず、先が気になるストーリー展開という点では良かったし、全体的には面白かったので満足。
英文としては、単語の難易度は少し高めに感じたけど、文体がキッチリしていたのと崩れた口語が少ないので個人的にはかなり読みやすかった。登場人物が多くないし、物語の佳境では会話が多くなるのでストーリーの把握も難しくないと思う。とりあえず第 1 巻は文句なしなので、読む方が増えてくれたら良いな。
メイン主人公は Luke
本シリーズのメイン主人公は第 1 巻の主人公である Luke。第 3、5、6 巻の主人公は Luke ではないが、脈絡もなく突然登場するわけではなく、2 巻や 3 巻で一度登場した後に主人公になっている。各巻では彼らにクローズアップしており、初登場時では分からなかった彼らの内面が描かれる。
Luke | 1、2、4、7 巻の主人公。シャドウ・チルドレンの少年。 |
Nina | 3 巻の主人公の少女。初登場は 2 巻。 |
Trey | 5 巻の主人公の少年。初登場は 2 巻。 |
Matthias | 6 巻の主人公の少年。初登場は 3 巻。 |
各巻の導入のあらすじと簡単な感想
#1: Among the Hidden
YL | 4.9 |
総語数 | 32,127 |
邦訳 | 絶対に見つかってはいけない |
食糧危機に備えた人口抑制政策により子供の数は 2 人以下に制限されていた中、とある家庭の三男として生を受けた 12 歳の少年 Luke。”存在しない子供” として半ば閉じ込められつつ育った Luke だったが、ある日、誰もいないハズの向いの家の中に見知らぬ人間の姿を見つける。そしてその日から、彼の生活は大きく変わっていくのだった――。
この 1 巻は滅茶苦茶面白かった! 登場人物は少なく、殆どが Luke 一家と向かいの家の人々のみだったが、存在しない子供として Luke がどのような運命にあるのかが気になり、最初から最後まで興味深く読めた! ついに Luke が家の外に出るシーンや、世界から隔離されていた子供が初めて体験する外の世界の描写はドキドキしたなぁ。しかし Luke の両親、禁止されている三男を生むなんて無責任だなと思わなくもなかったけど、当時は人口抑制なんてバカげた法律はすぐになくなるという雰囲気があったみたいだし、まさかこんなに厳しい法律になるとは見抜けなかったのだろうな……。全体的に暗い雰囲気だったけど、Luke と Jen の会話は面白く、また予想外の展開で面白かった。続巻で Luke がどうなるのか楽しみだ!
#2: Among the Impostors
YL | 5.1 |
総語数 | 34,305 |
邦訳 | 絶対にだまされてはいけない |
偽の ID を手に入れ、外の世界へと飛び出た Luke。しかし彼が初めて体験した外の世界は、窓が無く、生徒たちの様子もどこかおかしい閉塞感あふれる学校だった。正体がバレると命の危険があるため、 Luke は自分を出せずに学校で孤立。ルームメイトからも虐められ、希望を失いかけていた。そんな中、彼は自身と同じ境遇の子供達を見つけることになる――。
物語の前半 (4 割ぐらい) までは陰湿な学校やウジウジした Luke の描写が多く、正直イマイチだったけど、中盤で Luke が同じ境遇の子供達を見つけてからは物語が一気に動き出し、予想外の展開で面白かった! 同じシャドウ・チルドレンでも立場は様々。テレビを見て育った子もいれば、13 年間ずっと部屋に籠って本を読んでいた子もいる。そんな中で、Jen と出会い、他のシャドウ・チルドレンを助けたいという意志を持った Luke には芯を感じ、応援したくなる。しかしなかなか物騒な世界観だし、3 巻以降のタイトルや表紙に不穏なものを感じる。不安だが先が気になる。
#3: Among the Betrayed
YL | 4.9 |
総語数 | 33,881 |
邦訳 | 未翻訳 |
Luke の通う学校の姉妹校に通っていた少女 Nina は、とある生徒にうらぎられ人口警察に捕らえられた。そして尋問に掛けられていた中、とある男性から提案を受ける。別途捕らえていた 3 人の少年少女達を騙し、シャドウ・チルドレンだという証拠を掴めば Nina の命を助けてやると。協力を拒み死を受け入れる、自分の命を優先し 3 人を騙すか。Nina は混乱したまま、残酷な選択を迫られていた――。
今回の主役は 2 巻で登場した女子校の生徒 Nina! 2 巻に彼女が登場した時、もうちょっと彼女の登場シーンが欲しかったのでこれはうれしいサプライズだった。主人公が変わったことで新鮮な展開になったし、ちゃんと Luke も出てきたし面白かった。4 巻以降も主人公が毎回異なるのかな?
展開は、2 巻と同様に前半のテンポが悪かったのが少し残念だったかな。人口警察の男についても予想通りだったし……。でも前半で丁寧に Nina の状況や心情を描いていたからこそ、後半からの展開がより面白なったのだと思うし、終盤は予想外な部分もあったので良かった。特に Nina の、自分の命が掛かった場面で揺れ動く心情や、箱入りで育てられたので知識や経験が不足していてままならない描写は良かったな。読んでいて少し苦しかったけれども (笑。それに 3 人の子供は良いキャラだったので 4 巻以降登場してくれたらうれしいな~。
#4: Among the Barons
YL | 4.9 |
総語数 | 37,343 |
邦訳 | 未翻訳 |
Luke が学校に通うようになり 4 ヶ月。彼は学校での生活にも慣れ、外の世界を知らない他の生徒たちに色々な遊びを教えていた。しかしそんな折、Luke が持つ偽 ID の持ち主の両親から連絡があり、弟がそのボディーガードと共に学校にやってくることに。全く知らない家族と兄弟を演じる羽目になる Luke。果たして両親、そして弟の真意とは。さらには不審な動きをするボディーガード。それぞれの思惑が交差し、物語は思いもよらない結末へと進んでいく――。
再び主人公は Luke に! やはり Luke の動向が一番気になるのでうれしい。そして今回は序盤から予想外の展開の連続だったけど、とにかく誰が仲間で誰が敵なのか分からず Luke と同様に疑心暗鬼に陥ってしまったよ……。新しく登場した人達の態度や言動は全て怪しく思える (笑。しかし弟が登場するとはね~。Luke に偽 ID を提供してくれた家族のことも気になっていたので、この巻で色々と状況が整理されて良かった。ちょっと強引な展開にも思えたけど。あと、最後の展開はとても良かった! もう登場することがないのかなと思っていた人達とも再会してうれしかったし、Luke の成長も感じられて満足。しかしこの物語はどのような決着を迎えるのか全然予想付かないな~。次巻が楽しみだ!
#5: Among the Brave
YL | 5.0 |
総語数 | 48,549 |
邦訳 | 未翻訳 |
Mr. Talbot に助けを求めに彼の家まで来た Trey 達だったが、あろうことか Mr. Talbot が人口警察に連行される場面に遭遇してしまった! さらに Trey 達をここまで連れて来た車の運転手が、Luke や Nina 達をどこかへ連れ去ってしまう。追い打ちをかけるように、人口警察のトップがクーデターを起こし国を手中に収め、シャドウ・チルドレンの状況はますます悪化してしまう。途方に暮れる Trey は Luke の兄 Mark と知り合い、仲間の救出に共に旅立つが――。
相変わらず物語前半はテンポが悪くてイマイチだったけど、後半の Trey 凄かった……。前半の臆病っぷりを覆す後半の活躍! このシリーズ、シャドウ・チルドレンの成長がテーマになっているからか、物語の前半で子供達の「怖い・嫌だ・やりたくない」という内面の気持ちをたっぷり描くのだけど、くどいからテンポ悪いんだよね。でも、後半はいつも通り面白かったというか、他の子供よりも Trey の成長・活躍っぷりが凄かったな。Luke の兄 Mark と Trey の関係性も良かったし、最後の展開も驚きだった。さぁ、次はどんな展開になるのかな~?
#6: Among the Enemy
YL | 5.0 |
総語数 | 43,625 |
邦訳 | 未翻訳 |
Matthias、Percy、Alia は Nina と人口警察の刑務所から脱走した後、Nina や Luke 達とは学校に通うことになり、そこで心地よい生活を送っていた。しかし人口警察が突然学校に大挙して押し寄せ、全学生を連れ出しに来た。人口警察は学生を養成キャンプへと送り込もうとしていたのだ。Matthias ら 3 人もトラックに乗せられ、見ず知らずの土地へ連れていかれる。焦った Matthias は何とか脱出しようと試みる。しかし意図せず事故を引き起こし、Alia が意識不明に。さらには Percy にも危機が訪れようとしていた――。
3 巻で Nina と共に行動した 3 人の少年少女が再登場。年齢は 12 歳、9 歳、6 歳ぐらいらしい。思っていたよりも幼かった! そして今回の主人公は 3 人の中で最年長の少年 Matthias。しかし、3 巻では 3 人とも家庭に匿われていた他のシャドウ・チルドレンとは違って自立していたように思えたけど、3人はお互い依存しあっていたのだなと気づかされたよ……。今回は Matthias が依存から脱して精神的に成長する回だったね。
Matthias は内向的な性格では無いので、他の巻よりも後ろ向きな描写が少なくて物語前半から読みやすく面白かった! 後半の展開はご都合主義感があったし驚きの展開も少なかったので少し物足りなさがあったけど、前半は本格的な命の危機が訪れて、ドキドキしながら読み進められたかな。結構辛いシーンも出てきて、Matthias がショックを受けている場面なんかは悲しいけどのめり込んで読めたし。しかしシリーズが進むにつれ、どんどん状況が悪化して来ているのを感じるな。そんな中でも諦めずに抵抗するメンバーがいるけど、主要メンバー以外は簡単に命を落としてしまうこともあるし、まだまだ状況は厳しい。次巻がラストだけど、果たしてどんな結末になるのか未だに予想がつかない……!
#7: Among the Free
YL | 5.1 |
総語数 | 42,794 |
邦訳 | 未翻訳 |
Luke は人口警察に入隊し、潜伏しながらも地道に抵抗活動を続けていた。しかしある日、彼は上官に命じられ、とある街で特別任務に従事することとなった。その任務とは国民に新たな ID カードを配布するというもの。Luke は人口警察のメンバーとして街の住人を広場に集め始める。しかし人口警察の指示に従わない老婆がいた。激怒した上官は Luke に老婆射殺を命じるのだが――。
最終巻の主役は Luke! やっぱり Luke が締めないとね。でも 13 歳の子供達が中心となって政府を打倒し革命を起こすというのは無理があると思っていたので、人口警察が破れる描写とはああいう展開で良かった。それに Luke 達が何も役に立っていないわけではなく、わずかながらも政府打倒に関わっていたといのが良いね。そして Luke の最後の演説は良かった。今までの苦労や葛藤を乗り越え、遂に Luke が……という展開は熱かったし面白かった!
しかしだね。前半というか今回は全体の 8 割ぐらいが溜めの展開で。折角 1、2、4 巻で Luke が成長して行動的になってきたのに、全てを台無しにするかのように、ただ状況に流されるだけの姿が描かれるという……。そんな描写が全体の 8 割に渡るのは流石になー。それに Nina、Trey、Matthias 達の活躍を期待していたのだけど、最終盤までずっと Luke 一人だけだったのも残念だったな。主人公になった仲間達をもっと活躍させてくれよ~。ちょっと期待外れな展開でもあった。結局、一番面白かったのは 1 巻だったかな。2 巻以降は、物語前半で主人公がウジウジする描写が多くてイマイチな場面が多かったのが残念。もう少し冗長な展開を減らしてテンポが良ければもっと楽しめたと思う。でもまぁ、最終巻まで展開の予想がつかなかったし、物語後半はいつも面白かったので全体的には満足!
Shadow Children シリーズ 語数・YL 一覧
No. | YL | 語数 | タイトル | 出版年 |
---|---|---|---|---|
1 | 4.9 | 32,127 | Among the Hidden | 1998 |
2 | 5.1 | 34,305 | Among the Impostors | 2001 |
3 | 4.9 | 33,881 | Among the Betrayed | 2002 |
4 | 4.9 | 37,343 | Among the Barons | 2003 |
5 | 5.0 | 48,549 | Among the Brave | 2004 |
6 | 5.0 | 43,625 | Among the Enemy | 2005 |
7 | 5.1 | 42,794 | Among the Free | 2006 |
※ | YL は自己評価 |
※ | 語数は AR BookFinder より (計272,624語) |
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