ニューベリー賞にも選ばれた名作「Sarah, Plain and Tall」。
開拓時代の平原を舞台に、家族の絆を優しく静かに描いた物語で、個人的なお気に入りシリーズの 1 つです。英語多読の題材にもオススメですよ!
Sarah, Plain and Tall シリーズ
概要
ニューベリー賞 受賞作 (1986年)
日本語タイトル | のっぽのサラ |
著者 | Patricia MacLachlan (パトリシア・マクラクラン) |
巻数 | 全5巻 |
YL | 3.4~3.6 |
語数 | 各巻 約8,000 ~ 約14,000語 (計51,485語) |
開拓時代、平原で暮らす家族
Sarah, Plain and Tall シリーズは、開拓時代の平原に住まう家族を描いた物語。暖かくなり眠気が訪れる春、水不足に苦しむ夏、冬に備えて準備をする秋、吹雪に耐える冬。四季が訪れる平原に住む父と姉弟の 3 人にもとに新たな母が訪れ、命が誕生し、成長した子供は家を出て新たな家族を形成するという、当たり前の生活を静かに優しく描いている。
派手な出来事や描写がある本ではなく、文章も比較的簡易でありながら静かで丁寧な文章で、気づいたら1冊読み終えているというぐらい魅力的な内容で個人的にはかなり好きなシリーズ。全5巻で、どの話も良かったが個人的に一番好きなのは 3 巻の Caleb’s Story。1 巻を読んでみて気に入ったらぜひ3巻まで読んでみて欲しい……!
なお、自然と共に生きる人々が描かれているため動植物の英単語は多い。特に 1 巻。もちろんその辺りの英単語を知らなくても物語の理解にさほど支障は出ないが、調べていくと草原の様子がイメージ出来ると思う。
主な登場人物
平原で暮らす3人の家族と海辺の街からやってきた Sarah が中心の物語。人間関係は複雑ではないが、彼らと共に暮らす犬、猫、馬、牛、羊、ニワトリ達にもそれぞれ名前があるので登場する固有名詞は多く、ある程度整理しておかないと結構こんがらがる。とりあえず 1 ~ 2 巻では以下の面々を覚えておけば大丈夫なハズ……。
Jacob Witting | 父。新しい妻を新聞広告で募集する |
Anna | 長女。1~2巻の語り手 |
Caleb | 弟。産みの母を知らぬため、新たな母 Sarah にすぐ懐く |
Lottie, Nick | Witting 家の飼い犬 |
Jack, Bess | Witting 家の飼育馬 |
Sarah Wheaton | Jacob が出した広告に応じ、メイン州の海辺の街からやってきた女性 |
William | Sarah の兄で漁師 |
Meg | William の結婚相手 |
Mattie, Harriet, Lou | Sarah の叔母達 |
Seal | Sarah の飼い猫。足は白く、体はアザラシ (seal) のような灰色 |
Brutus | 叔母 Lou の飼い犬 |
Matthew Parkley | Witting 家の隣人。Jacob より前に結婚相手を広告で募集したことがある |
Maggie | 広告を見てテネシー州からやってきた、Matthew の結婚相手 |
Rose, Violet, Tom | Parkley 家の子供達 |
Sam | Parkley 家の飼い猫。オレンジ色 |
各巻の感想
#1: Sarah, Plain and Tall
YL | 3.5 |
総語数 | 8,377 |
邦訳 | のっぽのサラ |
開拓時代のアメリカの平原で暮らす父と姉弟の3人。そんな彼らの元にやってきた、海辺の町に住む女性 Sarah。彼らが家族になるまでの交流を描いた作品だが、亡き母を覚えている娘と覚えていない弟が対象的で、不安と期待の描写がうまい。全体的に静かで優しく、時に切なさも感じる物語。名作!
オーディオブックの朗読はテレビ映画版で Sarah 役を務めたグレン・クローズによるもの。こちらも物語の雰囲気が出ていて良い。
#2: Skylark
YL | 3.5 |
総語数 | 10,511 |
邦訳 | 草原のサラ |
Sarah が平原にやってきてからしばらくして、Sarah と父は結婚した。そして彼女が初めて過ごす平原の夏。飼っていた動物達に新たな命が宿るなど楽しい出来事もあったが、干ばつが発生し水不足で厳しい暮らし体験する――。
第2巻では Sarah が平原の暮らしと厳しさを体験し、その地に住まう人になるまでが描かれている。日を追うごとに井戸の水が減り、川さえも干上がっていく様子は、自然との共存の厳しさを伝えてくれる。1巻ではあまり出ていなかった、Sarah の行動的な部分や頑固な面が多くて新鮮。
#3: Caleb’s Story
YL | 3.4 |
総語数 | 14,304 |
邦訳 | 未翻訳 |
ある年の冬、Anna が引っ越す日。4歳半となった末妹の Cassie は納屋の裏で見知らぬ男を見たというが、Caleb は信じない。しかし彼は納屋の馬が一頭多いことに気づく。そして近くには、John と名乗る見知らぬ男がいた――。
Anna は Sarah が来た日から書いていた日記を Caleb に託し、これからは Caleb が日記を書くことに。というわけで今回の語り手は Caleb。今作では父 Jacob に焦点があたった物語。いつも頼りになっていた父が見せる意固地さや、新たな家族 Cassie の子供らしい無邪気さなどが見どころだったが、一番良かったのは成長した Caleb。かつては幼かった彼だが、今作ではいち早く謎の男が抱える秘密に気づき、行動を起こす様に感動させられた。カッコいい!
#4: More Perfect than the Moon
YL | 3.4 |
総語数 | 9,325 |
邦訳 | 未翻訳 |
Cassie が小学3年生になる頃。少し前に Caleb から日記を託された彼女は、日記の内容を面白くしようと、ストリーテラーを気取りつつ自分の創作話を綴っていく。そんな暮らしていたある日、Sarah が体調を崩し、ついには気を失ってしまう。Cassie は母の回復を祈り、日記に願いを綴っていくが――。
今作の語り手は Cassie。彼女が生まれる前、Sarah が平原に来たばかりの事であっても、Anna が綴った日記を読むことで当時の出来事を知っていると Cassie が言っていたが、まさにシリーズ 1 巻から物語を読んでいる自分と同じような気持ちなのだろうなとしみじみ……。語り手が変わることで、物語の雰囲気が少しファンタジックになっていたのはなかなか面白かった。
#5: Grandfather’s Dance
YL | 3.6 |
総語数 | 9,355 |
邦訳 | 未翻訳 |
兄 Caleb が遠くの学校に通うために家を出て、寂しさを感じる妹の Cassie だったが、大好きな家族や動物に囲まれ楽しく過ごしていた。そして Anna の結婚式の日が近づき、さらには Sarah の家族もやってきて賑やかに暮らす家族一同。しかし楽しい日々の裏で、一つの出来事が起ころうとしていた――。
今回も語り手は Cassie。赤ちゃんが生まれても好きにならないと断言していた彼女だったが、良い姉になっておりニッコリしてしまった。また、シリーズ最終巻となる今作では、Sarah が平原に来てからの思い出話しも多かったし、楽しい出来事も悲しい出来事もあり、まさに集大成という感じの話で面白かった。
同レベル帯の洋書
Sarah, Plain and Tall シリーズと同レベル帯で個人的に気に入っている洋書は以下。洋書75選の記事に色々と掲載しているのでそちらを参照のこと。
YL | シリーズ |
---|---|
3.1 | Encyclopedia Brown シリーズ |
3.3 | My Father’s Dragon シリーズ |
3.3 | A to Z Mysteries シリーズ |
3.9 | Goosebumps シリーズ |