【英語でゲーム】 極限脱出ADV 善人シボウデスの感想 | えいらく

【英語でゲーム】 極限脱出ADV 善人シボウデスの感想

命が掛かった脱出ゲームとアドベンチャーゲームが合わさった極限脱出シリーズの2作目「善人シボウデス」。

操作性はイマイチでしたが、ストーリー自体は驚きの展開もあり面白かったです! 前作「9時間9人9の扉」と続編「刻のジレンマ」の感想もどうぞ。

英語版 極限脱出ADV 善人シボウデス

概要

協力か、裏切りか? あなたはもう善人ではいられない。

英語タイトルZero Escape: Virtue’s Last Reward
ジャンル脱出×サスペンス
私のプレイ時間約32時間 (全実績解除)
機種PC (Steam)PS4、PS Vita、DS
繰り返されるノナリーゲーム

2028 年 の 12 月 25 日。何者かに拉致された大学生のシグマは、同様に拉致された 8 人と謎の施設の中で出会う。そして彼らはウサギを模したキャラクターから、施設からの脱出の権利を賭けて参加者同士で「裏切り」のゲームを行うことを強要される。自らの命のために、個性的な 9 人のメンバーが裏切り、時に協力しながら脱出ゲームに挑む。

極限脱出シリーズ3部作

善人シボウデスは極限脱出シリーズ 3 部作の 2 作目。1 作目 の 1 年後が舞台で、登場人物も何人か続投しているので、先に 1 作目をプレイした方が良い。

本作は 2012 年に 3DS と PS Vita で発売された後、 2017 年に 1 作目 と 2 作目をセットにしたダブルパック版が Steam、PS4 で発売された。ダブルパック版ではグラフィックの高解像度化やセーブスロット数の増加が行われている。

1作目極限脱出 9時間9人9の扉Nine Hours, Nine Persons, Nine Doors
2作目極限脱出ADV 善人シボウデスZero Escape: Virtue’s Last Reward
3作目ZERO ESCAPE 刻のジレンマZero Time Dilemma
1作目+2作目ダブルパック (他機種への移植版)Zero Escape: The Nonary Games
英語でプレイするには

3DS と PS Vita 版、そして PS4 のダブルパック版はどれも北米でも販売されているので、そちらを購入すれば英語でプレイ可能。また、Steam 版 (ダブルパック) は多言語対応しているので日英でプレイできる。

以下、ダブルパック版の内容に基づいて記載していく。

ゲーム内容

AB ゲーム

協力 or 裏切り でポイントを稼ぐ

捕らわれた施設から逃げるには、自分に与えられたポイント (BP) を 9 以上にし、[9]の扉から出る必要がある。BP は AB ゲームという、3 人が 2 チーム (2 人と 1 人) に別れ、各チームが「協力 (自チームも対戦チームも +2 BP)」 か「裏切り (自チーム +3 BP、対戦チーム -2 BP)」 を選ぶゲームを何回か行うことにより増減されていく。

普通に考えれば全員「協力」を選べば良いのだが、自らの命が掛かった状況で無条件で相手を信頼することができるのか否か、というのが大きなポイント。また、各人の素性や思惑が重なり合い、複雑な状況に陥っていくストーリーは緊迫感があり面白かった。

キャラクターの名前

今作のノナリーゲーム参加者は以下の 9 人。前作のノナリーゲーム参加者は 1 ~ 9 の数字にちなんだニックネームを付けていたが、今作では特にニックネームはないので普通に覚えないといけない。まぁ Clover と Alice は前作をやっていれば馴染みがあるけど、残り 7 人を覚えるのだけでも少し大変だった……。

日本語英語
シグマSigma男子大学生。主人公
ファイPhi知的でクールな女性。主人公の相棒的存在
ディオDioサーカス団員のような服装の男性
天明寺Tenmyouji廃品回収業を営む老人
クォークQuark博識な少年
ルナLuna20 代前半の女性
四葉Clover前作のノナリーゲーム参加者
アリスAlice前作のエンディングに登場した女性
KK記憶喪失で、鎧を着ている謎の人物

会話パートで進路を決める

どの扉に進めば良いのか

AB ゲームで BP を 9 以上にすることが目的だが、AB ゲームを行うためには毎回異なるキーが必要となる。そのため、そのキーを探すために 9 人 が 3 チームに分かれて提示された扉に進んでいくことになる。

ゲーム自体は会話パートと脱出ゲームパートを交互に繰り返しながら進んでいく。会話パートでは状況の確認をし、最後に自分が進みたい扉を選ぶことになる。この点は前作と同様。

ただ、今作では登場人物 9 人それぞれに色が与えられており、進みたい扉に合わせた色の組み合わせ 3 人を選ぶ必要がある。この辺の仕組みは光の三原色が採用されているのだが、結構複雑。とはいえ相棒となる Phi がほとんど解説してくれ、自分は細かいことを考える必要がなかった。マジで良かった……!

脱出ゲームパート

メモ必須のパズルもある

AB ゲームを行うのに必要なキーを得るために、以下の手順を繰り返していく。

  1. 部屋を探索しアイテムを見つける
  2. アイテムを利用してパズルを解く

脱出ゲームの仕掛け・パズルは前作よりも種類が増え、難易度も高くなっている。しっかり考えればほとんどは自力で解くことができ、歯ごたえがあって面白かった。ただ、理不尽さを感じる仕掛けもなくはないし、明らかに暗記は無理なので別途メモ帳に内容を残しておかなければならない文字列もあった。

もしストレスを感じるようなら攻略情報をすぐに調べた方が良いとは思う。私は 8 割ほど自力で解いたが、2 割は攻略情報に頼った……。

英語の題材として

前作より難易度アップ

内容と表現が難しくなった

前作と比較すると、以下の要素により英文が難しくなったと感じた。

  • 脱出ゲームのルールが複雑化した分、英文の内容理解が難しくなった
  • シュレディンガーの猫のような専門分野の説明が増えた
  • 慣用句・句動詞が使われる頻度が増えた
  • スラングが増えた
話の内容自体が難しい

ストーリーの進行具合に応じて、各種脱出ゲームのルール、新聞記事に掲載されていた病気や治療法の話、一部専門分野の話、首謀者の意図は背景などが語られるが、話の内容自体が前作よりも難しくなっている。もちろんそれぞれ詳しく語られはしたが、英語でそれを読むとなると少し内容が複雑になった印象を受けた。

なんどか音声を日本語に変えようかと考えたが、Phi のしゃべり方は英語音声の方が好きなので、最後まで英語音声にした。Phi の声としゃべり方、癖になるんだよね……。

表現の難化

文法的にはそこまで難しいと思わなかったが、会話では前作よりもスラングや慣用句・句動詞の使用頻度が高いと感じた。特に慣用句は積極的に勉強しておかないと知らない表現が多くなりがちなので、歯ごたえある英文になっていたと思う。

スラングについては、普通に口が悪いキャラクターがいることと、日本語だと語尾に「ウサ」をつけるゼロ3世のしゃべり方が、英語だと everybody → everybunny みたいに部分的にウサギに関連する単語に変更されるので少し読みづらかった。

総じて前作よりも英文の難易度は高かったが、何事も慣れだし、癖がある英文を読むのも良い訓練になった。とりあえずプレイ中に遭遇した慣用句をいくつか紹介しておく。

遭遇した表現を一部紹介

bite someone’s head off

([someone]にかみつくように言う、怒鳴りつける)

主人公が出会ったばかりの Phi から反抗的な言動をされ、「そんな言い方するなよ」と伝えるときに使った表現。

ulterior motive

(隠された動機)

主人公が高い位置に届くように肩車をしようと Phi に提案したところ、軽蔑のまなざしで見られたので、下心は無いと伝えた時に使った表現。

ちなみに画像後半の “hand to god” は、ここでは「神に誓って (嘘ではない)」という意味。

Beats me.

(知らない、分からない)

「何のための部屋なのか分かる?」と主人公に質問された Phi が、分からないという意味で使った表現。

正確に書くと “It beats me.” であり、「その質問は私を負かした」つまり「知らない」という意味になる。カジュアル表現で、仲間内での会話でよく使われる。

the third degree

(厳しい尋問、執拗な追及)

境遇に関する質問をずっと受けていた Alice が使った表現。

“the third degree” は昔のフリーメーソンの最上級である第三級の親方階層のことで、その昇格試験に厳しい尋問が課されたことがこの意味の由来となったらしい。

hook, line, and sinker

(すっかり、完全に)

嘘の情報にすっかりだまされたね、と Alice が相手に伝えた時に使った表現。

“fall for” (騙される) という表現に、「(魚が) 餌と一緒に hook (釣り針)、line (釣り糸)、sinker (おもり) まで飲み込んだ」という強調を追加している。

You reap what you sow.

(自分が蒔いた種、自業自得)

主人公が Phi からひどい仕打ちを受けた際、「前のお返しだ」という意味で使われた表現。

“what you sow” (自分でまいた物) を “reap” (刈り取る) ということで、自分の行動の結果が自分に返ってくる、という意味。

wouldn’t put it past someone

(someone ならやりかねない)

「俺がそんなことするわけないだろう」と Dio が主人公に言った後、主人公が「お前ならやりかねない」と発言した場面。

“put” は「~とみなす」、”past” は「~の能力を超えて」という意味で使われている。”put it past him” なら「それは彼の能力を超えていると思う = 彼にはできないと思う」となるが、”wouldn’t” があるので「やりかねないと思う」になる。

make a pass

(言い寄る、口説く)

Luna と主人公が気まずい雰囲気になっていた時、Dio が軽口で「言い寄って振られたのか?」と発言した場面。

“pass” はフェンシング用語で「突き」のことで、突きを放つという意味から転じて「口説く」という意味になったらしい。

dollars to donuts

(まず間違いないと思う)

不審な物を発見した天明寺が、「これは高い確率でゼロの企みに関係がある」と推測した場面。

ドーナツのような安い物に何ドルも金を賭けても良いくらい確信がある、ということ。

(get it) straight from the horse’s mouth

(本人から、確かな筋から (情報を得る))

第三者からではなく直接本人から事の真相を聞こう、という意味で主人公が発言した時に使った表現。

“it” は馬の年齢の事であり、直訳は「馬の年齢を直接馬の口から聞く」。馬の歯を見ればだいたいの年齢が分かることからこの表現が生まれたということらしい。

全体的な感想

ストーリー

前作の内容から予想していたがやはり SF 要素が多く、強引な展開・理論は多かった。しかしストーリー自体は面白く、終盤の色々と謎が解明されていく場面はのめり込んで読んでいた。今作では完結していないが、逆に続編が気になる終わり方が早く次回作をやりたいというモチベーションが高まった。

ストーリーの進め方で疑問だったのは、AB ゲームで「協力」以外を選ぶ必要性をほとんど感じなかったこと。登場人物は色々と理論をこねくり回しているが、どう考えても「協力」一択だと思う。もう少し裏切りにメリットがあれば良かった。

キャラクター

気になったのは言動に一貫性が無い人物が一定数いたこと。AB ゲームでの分岐をシナリオセレクトで両方試すとわかるが、自分可愛さに自分の選択を正当化しているだけのような発言が多く、あまり魅力を感じない人物が複数人いたのは残念。

とはいえ、今作では主人公の相棒であり頭脳労働担当の Phi がかなり気に入った。これは英語音声と演技が自分好みだったというのもあるが、基本的に冷静に判断できる人物が好きなので、必然だったのかもしれない。反面、主人公は同行者に質問してばかりで (脱出ゲーム以外では) 自分で解決策を示すことが少なく、有能キャラに思えずイマイチだったかな……。

前作では一番のお気に入りキャラクターだった Clover が今作にも登場したのはうれしかったが、もう少し活躍して主人公と絡んで欲しかったとは思う。まぁ主人公の影を薄くしないようにするには仕方がないが。あと、前作ラストに登場した Alice については、強引な設定にも感じるが誰なのかというのが判明したので一応満足。それでも彼女の服装はちょっと……。誰か疑問を抱け (笑)。

UI、演出

残念ながら、前作よりもストレスを感じる操作性になっている。私がプレイしたことがあるアドベンチャーゲームの中では最低レベル……。特に気になったのは以下。とにかく、早く先に進めたいのに進まない冗長な演出が多すぎる。

  • テキストの表示が遅く、表示スピードも変えられない
  • 部屋移動の演出が長すぎ、多すぎ。スキップもできない
  • 脱出ゲームのカーソル移動やアイテム選択などの UI がイマイチ
  • 中盤のシナリオは、どの分岐でも似たような内容で冗長

と、不満点は色々とあるのは確かだが、ストーリー自体は面白かったし、英語の勉強にもなった。前作「9時間9人9の扉」が楽しめた方なら今作もオススメできる。

 
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