「’im」「li’l」「’zat」

これら単語が何を表しているかご存じですか? それぞれ「him」「little」「is that」を表しています。本記事では「知っていればなんとかなる。でも知らなければ難しい」英単語の短縮・省略表現を紹介します。細かく覚える必要はありません。存在を知っていれば (たまに) 役立つぐらいにお考えください!

なぜ英単語の綴りは省略・変更されるのか

小説・マンガなどで英単語が省略・変更される理由

発音の特徴を文字で表現する

小説やマンガなどで英単語が省略表記されることがありますが、主な理由として考えられるのは以下2通りです。

  1. 話者の喋り方の特徴を文字として表現するため
  2. 長い文字を省略するため

特に1の理由が大きいでしょう。日本の小説・マンガでも話者の喋り方で「おはよう」「っはよー」「オハヨ」のように文字の記載を変えますよね? 英語でも同じように、特に発音の違いを文字で表現する方法があります。非標準的な綴り (youをyehと表記するなど) を使うこの方法は「視覚方言 (eye dialect)」と呼ばれており、地域や教育レベル差による発音の違いを文字に落とし込むことができます。英語マンガ「ドラゴンボール」や小説「ハリーポッター」でも使われています。

知らないと理解できない視覚方言 (eye dialect)

ドラゴンボールの主人公である孫悟空は、「オラが もっと力 (リキ) のつく うめえもん 食わせてやる」などのように喋り方が特徴的です。英語版ドラゴンボールでもセリフの独特さ・荒々しさを表現するためか視覚方言が多用されています。例えば上記画像のセリフは「やいやいやいっ!! なにすんだよっ!!」の翻訳文ですが、セリフ中の「WHADDAYA」は「WHAT DO YOU」、「DOIN’」は「DOING」を表しています。単純なセリフですが視覚方言を知らない場合は戸惑ってしまうでしょう。

ハリーポッターの登場人物ハグリットも一部で「ハグリッド語」などと呼ばれるほど特徴的な喋り方をしています。語尾の欠落や一般的に認知されている短縮形であれば元の単語の予測はつきますが、ter (to) やfer (for)などの変化は視覚方言の存在を知らないと予想は困難です。

語尾 g の脱落bein’、goin’
語尾 t の脱落abou’、nex’
短縮形の語尾 t の脱落didn’、aren’
助動詞の短縮形に a が付加shouldn’ta
発音の短縮dunno、lemme
発音の変化 (o→er)ter、fer

その他一般的な海外ドラマやゲームであっても英単語の省略・短縮形は使われることは多々あります。例えば、学校英語では学ばない表現ですが「’em (themと同義) 」などは頻繁に出てきます。山賊や海賊などが登場すれば、訛りや荒い口調を表現するために少し難しい視覚方言が使われることもあります。

本記事では英語の小説・マンガ・ドラマ (字幕)・ゲームで使われる視覚方言を紹介します。覚える必要はありませんが、存在を知っておくと、いざ視覚方言に遭遇した時にすんなり理解できるので多読がはかどりますよ!



英単語の省略・変化パターン

単語の省略と発音の省略は分けて考える

視覚方言について言及する前に、英単語の綴りの省略パターンについて説明します。なお、いくつか辞書やウェブサイトを確認しましたが、それぞれで異なる説明がなされる場合がありました。確固たる定義は難しいので、ここでは基本的にOxford Dictionaryの説明を基準にしています。

まず、ネットで英単語の省略について調べたことがある方は、

  • 省略形 (abbreviation)
  • 短縮形 (contraction)
  • 弱化 (reduction)
  • 消失 (elision)
  • 脱落 (deletion)
  • 連結 (linking)、リエゾン (liaison)
  • 同化 (assimilation)
  • 頭字語 (acronym)
  • 頭文字語 (initialism)
  • 縮約形 (shortening)
  • 視覚方言 (eye dialect)

上記のような単語に出くわしたかと思います。これら英単語は、「文字表記の省略」と「発音の省略」の単語が混ざっているので、同列で考えると混乱します。というわけで以下のように形と発音に用語を分けて考えます。

英単語の省略と発音の省略において、どちらも短縮 (contraction) という言葉がありますが、ややこしいので区別して考えています。その他にも似たような言葉が多いですが、短縮形・縮約形・頭字語・頭文字語は以下のように区別されています。それぞれの具体的な説明は後述します。

Oxford Dictionaryでの分類

Oxford Dictionaryの文法の説明では省略された英単語全般をabbreviationと称しているようですが、辞書内では英単語は省略形 (abbreviation) と短縮形 (contraction) に分類されていました。さらに、Oxford Dictionaryに掲載されていないような非標準的な省略・変化形については、ネットスラング・俗語と視覚方言に分類すると以下図のようになります。

英単語の省略・変化パターン
代表的なネットスラングや視覚方言は辞書に掲載されている場合もある

なお、ネットスラング・俗語の省略パターンは省略形と同じなので、以降は省略形・短縮形・視覚方言に大別して言及していきます。

省略形 (abbreviation)

概要

一般的な英単語の省略方法について記載します。ただし、短縮形は後述するのでこの項目では以下4パターンについて説明します。

  • 頭字語 (acronym)
  • 頭文字語 (initialism)
  • 縮約形 (shortening)
  • その他

Oxford DictionaryEnglish ClubGrammarly.comの省略形に関する説明を参考にしています。また、省略語の一覧はList of abbreviations (Wikipedia)Abbreviations.comなどで探せるかと思います。

頭字語 (acronym)、頭文字語 (initialism)

発音の仕方で区別

複数の単語の頭文字を組み合わせた単語は頭字語 (とうじご) または頭文字語 (かしらもじご)と呼ぶようです。2つの違いは英単語の発音の仕方です。頭文字を組み合わせた単語を、1つの単語として発音するものを頭字語、1つ1つの文字を区別して発音するものを頭文字語としています。例えば、CD (シー ディー)、UN (ユー エヌ) は1文字ずつ発音するので頭文字語です。

分類省略表記正式表記
頭字語
(acronym)
NATO/ˈneɪ.t̬oʊ/North Atlantic Treaty Organization
ASAP/ˈeɪsap/As Soon As Possible
Aids/eɪdz/acquired immune deficiency syndrome
頭文字語
(initialism)
CD/ˌsiːˈdiː/Compact Disc
UN/juːˈɛn/United Nations
US/ˌjuːˈes/United States

laserやscubaなど、現在では一般的な名詞として扱われている頭字語もあります。

分類省略表記正式表記
頭字語
(acronym)
radar/réidɑːr/radio detection and ranging
scuba/skúːbə/self-contained underwater breathing apparatus

ポイント

頭字語
  • 単語の頭文字を組み合わせる
  • ピリオドを付ける必要はない
  • 頭字語は基本的に、全てまたは1文字目を大文字にする
    • radar、scubaなど、一般名詞として認識されている場合は大文字にする必要はない
  • 発音は1単語として行う
頭文字語
  • 単語の頭文字を組み合わせる
  • ピリオドを付ける必要はない。
  • 米国では特定の単語でピリオドを付けることもあるが、無くても良い (U.S. と US どちらも正しい)
  • 所有格にする場合はアポストロフィ (‘) を付けるが、複数形にする場合は不要 (CDの所有格 CD’s、複数形 CDs)
  • 発音は1文字ずつ分ける

縮約形 (shortening)

長い単語の前後の文字を削除

単語の前後の文字を削除する形式は縮約形 (shortening) と呼ばれ、flu、adなどの単語が該当します。海外ではshorteningではなくturnactionやclippingと称されることもあります。なお、縮約形はすでに一般的な単語として認識されている単語もあるため、辞書では省略形とは記載されていない場合があります。ただし、正式な書類などではオリジナル表記で記載することが望ましいとされています。

省略表記正式表記
fluinfluenza
adadvertisement
blogweblog
tellytelevision
bikebicycle
MedMediterranean
Dec.December
Prof.Professor

bicycle → bike のように、一部の縮約形では綴りが若干変更されるケースもあります。

ポイント

頭字語
  • 英単語の前後を省略する
  • 省略時、アポストロフィ(‘) を付ける必要はない
  • 1文字目が大文字の単語を省略した場合は、縮約形の1文字目も大文字にする
  • adやblogのように、一般的な単語として使用できる省略形にはピリオドを付ける必要はない
  • 書類など伝統的な書式を重視する場合、縮約形にピリオドを付けることはある

その他

母音省略

短縮形、縮約形、頭字語、頭文字語に当てはまらない省略方法としては、主に母音を省略する方法 (please → pls など) と、別の文字に置き換える方法 (see you → cu など) が使われています。母音を省略する表記はネットスラングやマンガの擬音語などでも多用されています。擬音語については「多読が楽になる⁉ 英語マンガの擬音語で覚える英単語 180選」の記事も参照ください。

省略表記正式表記
plsplease
frmfrom
imgimage
ltrletter

母音省略のルールに関しては「14.10.略語の作リ方」の内容が参考になるかと思います。

文字の置き換え

同じ発音の別の文字に置き換える方法もネットスラングとしてチャットやSNSなどで多用されますが、easy → EZ のような置き換えは米国の税務申告書類の名称で使われるほど一般的でもあります。例えば、Form 1040の簡易版フォームにはForm 1040EZという名称がついています。

省略表記正式表記
cusee you
rare
ywhy
ezeasy

数略語 (numeronym)

その他に変わり種として、文字を数字で置き換える方法があります。数略語 (numeronym) と呼ばれており、英単語を数字で置き換える表現全般のことを指すようです。canine → K9、localization → l10n、World Wide Web → W3 など様々な使われ方があります。気になる場合はNumeronym (Wikipedia) を参照ください。

種類省略表記正式表記
数略語
(発音由来)
2to
4for
gr8great
数略語
(文字数由来)
l10nlocalization
g11nglobalization
i18ninternationalization
数略語
(その他)
W3World Wide Web
411New Yorker (New Yorkの市外局番から)
Y2KThe Year 2000 problem

ちなみに、英単語を文字数で置き換えるようになったのは、従業員の名前 (Scherpenhuizen) が長すぎて省略語 (S12n) を利用するようになったことが起源であると言われています。この辺りの経緯を調べた方の情報が「Origin Of The Abbreviation I18n」に掲載されています。結構面白いですよ。

おまけ: リートスピーク (leetspeak)、ヘックススピーク (hexspeak)

リートスピークと呼ばれる”ハッカー風”の置き換え方法もあります。文字を独特の当て字で置き換える記法で、l→1、t→7、E→3、A→4、o→0、a→@のように置き換えます。さらに、ヘックススピークと呼ばれる16進数の文字 (0123456789ABCDEF) のみで英単語を表記する方法もあります。O→0、S→5、I→1のように置き換えます。こちらはプログラミングの世界で使われることがあるようですね。

種類表記意味
リートスピーク
(leetspeak)
1337leet
H4CK3DHACKED
ヘックススピーク
(leetspeak)
0x8BADF00Date bad food
0xC00010FFcool off

文字の置き換えの流れでリートスピークとヘックススピークを紹介しましたが、これらは文字の省略とは異なる概念ですし、一般的な小説やマンガで使われることはありません。しかし、電脳世界やハッカーがメインとなるストーリーでは、もしかしたら暗号文などで使われるかもしれませんね!

ポイント

母音・子音の省略
  • 母音を消す (please → pls、JAPAN → JPN)
    • 1文字目が母音の場合は、1文字目は消さない (absent → absnt)
    • 母音が無いと元の単語の判別が難しくなる場合は、母音を残す (approximately → approx)
    • 元の単語が判別できるのであれば、子音を消しても良い (manager → mgr)
    • 同じ子音が連続していた場合、連続している子音を消しても良い (sorry → sry)
文字の置き換え
  • 単語の発音に合わせて、別の文字に置き換える
    • 多少発音が異なっても、置き換えが行われる場合がある
数略語
  • 単語の発音が数字の発音と同じ場合は、数字に置き換える (great → g8)
    • 多少発音が異なっても、置き換えが行われる場合がある
  • 単語の最初と最後の文字を除いて、間の文字数で置き換える (localization → l10n)
    • 明確な決まりはないので例外は多数ある
  • 電話番号など、特別な意味を持つ数字で特定の単語を置き換える


短縮形 (contraction)

概要

単語の中間を省略する表記

Oxford Dictionaryの説明を見るに、Doctor→DrやI’mやYou’veのように単語の中間を略した単語が短縮形と分類されるようです。短縮形とされる単語は発音の省略が大きく関わってきますが、まず先に単語の紹介だけ先に行い、発音については後述します。

単語単体での省略

単語単体での省略

Doctor→ Drのように、単語の最初と最後の文字以外を削除する省略方法です。Mister → Mr、Junior → Jrなど肩書で使われる単語はこの省略方法がとられているものが多いです。また、Limited → Ltd のように一部の中間文字が残る事もあります。なお、発音は省略しません。

表記意味
DrDoctor
LtdLimited
BlvdBoulevard
govtgovernment

なお、JAPAN→JPNなどの母音省略によって短縮形と同じような形になる場合もあります。このような場合、果たして短縮形と分類するのか否かについては正確なところは分かりませんでした。ネイティブでも省略形の分類は意見が分かれるようなので、正解は無いと思います。

ポイント

単語単体の省略
  • 単語の最初と最後の文字を残し、中間の文字を削除する
    • 単語の判別が難しくなる場合は、一部の子音を残す
  • アメリカ英語では短縮語の最後にピリオドを付ける場合が多い
  • 単語の発音は省略せず、オリジナルの英単語の通り発音する

助動詞の短縮形

助動詞が絡む短縮

I will → I’ll、you have → you’veなど助動詞が絡んだ省略は短縮形に分類されます。また、前述したDoctor→Drのパターンとは異なり発音も省略されています。色々パターンがあるので一覧で示します。なお、以下いずれかの辞書に掲載されているパターンのみ抽出しています。掲示板やSNSなどでは以下表に掲載されていないような短縮形も稀に使われますが (why’llなど)、インフォーマルすぎるので掲載していません。

助動詞の短縮一覧①

インフォーマルな表現も多いですが、少なくとも辞書に掲載されるぐらいには一般的に認知されているということなので、カジュアルな表現が多いライトノベルやマンガなどでは使われる可能性があるかと思います。ただし、自分で使うとしたら学校で習うような基本的なものだけに留めておいた方が良いかと思います。

bewillhave
amisarewaswerewillwouldhavehashad
II’mI’llI’dI’veI’d
youyou’reyou’llyou’dyou’veyou’d
hehe’she’llhe’dhe’she’d
sheshe’sshe’llshe’dshe’sshe’d
wewe’rewe’llwe’dwe’vewe’d
theythey’rethey’llthey’dthey’vethey’d
itit’s / ’tistwasit’llit’dit’sit’d
thisthis’sthis’llthis’dthis’vethis’s
thesethese’rethese’ve
thatthat’sthat’llthat’dthat’vethat’sthat’d
thosethose’rethose’ve
therethere’sthere’rethere’llthere’dthere’vethere’sthere’d
whichwhich’s
whowho’swho’rewho’llwho’dwho’vewho’swho’d
whatwhat’swhat’rewhat’llwhat’dwhat’vewhat’swhat’d
wherewhere’swhere’rewhere’dwhere’vewhere’swhere’d
whenwhen’swhen’rewhen’llwhen’swhen’d
whywhy’swhy’rewhy’dwhy’swhy’d
howhow’show’rehow’llhow’dhow’vehow’show’d
shalldocanmayneedmustdare
shallshoulddodoesdidcancouldmaymight
II’llI’d
youyou’ll
hehe’ll
sheshe’ll
wewe’llwe’d
theythey’ll
itit’ll
thisthis’llthis’d
these
thatthat’ll
those
there
which
whowho’llwho’s
whatwhat’d
wherewhere’d
whenwhen’swhen’d
whywhy’d
howhow’d

基本的にwasやwereの過去形では短縮表現が使われることはありません。また、he isとhe hasのように短縮形がどちらも同じ形になるケースはそれなりにありので、どちらの短縮であるかは文脈で判断する必要があります。

助動詞の短縮一覧②

助動詞 + not/have での短縮表現も一覧にしました。こちらも前述の辞書に掲載されているパターンのみ掲載しています。

nothavenot have
amamn’t / ain’t
arearen’t / ain’t
isisn’t / ain’t
waswasn’t
wereweren’t
willwon’t
wouldwouldn’twould’ve / wouldawouldna
havehaven’t / ain’t
hashasn’t / ain’t
hadhadn’t
shallshan’t / shalln’t
shouldshouldn’tshould’ve / shouldashouldna
dodon’t
doesdoesn’t
diddidn’t
cancan’t
couldcouldn’tcould’ve / couldacouldna
maymayn’tmay’ve
mightmightn’t / mightnamight’ve / mighta
needneedn’t
mustmustn’tmust’ve / musta
daredaren’t / dasn’t / dassn’t

二重短縮 (double contraction)

助動詞やnotが連続した場合の短縮形も実は存在するので、いくつか例を掲載しておきます。ただし、文字でこの表現が使われることは殆どありません。

フレーズ短縮形
they will havethey’ll’ve
she would haveshe’d’ve
we would havewe’d’ve
that would havethat’d’ve
would not havewouldn’t’ve
must not havemustn’t’ve
you would not haveyou’dn’t’ve
it would not haveit’dn’t’ve

その他の短縮形

良く使われる短縮語

to、of、youは他の単語と短縮されることが良くあります。代表的なものを掲載しておきますので、是非覚えておいてください。口語表現で頻繁に登場するものばかりですよ。

ちなみに以下の表現は発音を文字化したものだから視覚方言やRelaxed pronunciationに分類すべきだとする説もありますが、wannaやkinda、donchaなどはOxford Dictionaryでは短縮形に分類していますし、比較的使われる頻度が高い表現なので本記事では短縮形として分類しておきます。

to が絡む短縮形

単語・フレーズ短縮形
going togonna
(have / has) got togotta
have tohafta
need toneeda
ought tooughta
want towanna

of が絡む短縮形

単語・フレーズ短縮形
cup ofcuppa
kind ofkinda
lot oflotta
lots oflotsa
out ofoutta
sort ofsorta

you が絡む短縮形

単語・フレーズ短縮形
you ally’all
bet youbetcha
get yougetcha
got yougotcha
let youletcha
do youd’you
will youwillya
ain’t youaincha
don’t youdoncha
what are youwhatcha
what do youwhaddaya / whaddya / whadya
what did youwhadja / whadya
where did youwheredja
why did youwhydja / whyja

その他

単語・フレーズ短縮形
come onc’mon
give megimme
(I) don’t knowdunno / donno
let goleggo
let melemme
let’s seelessee

発音の短縮・変化

概要

単語の短縮形は、基本的には発音の変化・省略が由来になっています。また、視覚表現は発音の特徴・変化を文字に落とし込む手法なので発音の変化のパターンについて説明します。

なお、発音の短縮・変化について総合的に扱っているサイトが見つからなく、また各サイトで説明が異なっていたので、以降の説明は複数のサイト・論文を参考にして独自にまとめたものです。アメリカやイギリスなど国によって発音が変わってくる部分もあるので、国や地域によっては当てはまらない内容があるかもしれません。ご了承ください。なお、「英語リスニングにおける学習者が留意すべき音変化と「類音語」の克服に向けた指導」の記載内容を多分に参考しています。他の参考サイトは記事の一番最後に掲載しています。

発音の短縮・変化のパターンを8つに分類

英単語の発音は、音の省略や別の音と繋がることによって変化することがあります。発音変化・省略のパターンは以下のように分類されており、Connected SpeechやReduced Speechなどの分野で言及されていることが多いです。

  • 短縮 (contraction)
  • 弱化 (reduction)
  • 消失 (elision)
  • 脱落 (deletion)
  • 連結 (linking)
  • リエゾン (liaison)
  • 同化 (assimilation)
  • フラッピング (flapping)

上記項目のうち、リエゾン (liaison) はフランス語であり、連結 (linking) とほぼ同じように説明されているので連結として扱います。さらに上記以外のパターンをその他 (方言など)とし、それぞれの特徴をまとめると以下のようになります。

これら発音の省略・変化は基本的に「より簡単に発音する」ために行われています。なので発音記号を学び、英単語を子音と母音にきちんと分けて発音できるようになると上記発音の変化がしっくりくるようになります。発音の学習については「英語学習はまずコレ! 英語耳で発音記号を1ヶ月でマスター!」も参照ください。

ちなみにサイトによっては「弱化・消失・脱落」「連結・同化」「同化・フラッピング」をひとまとめにして扱っている場合もありますし、elisionの日本語訳が消失だったり脱落だったりします。一般的にdeletionは脱落と訳されることが多いので本記事ではelisionは消失と名付けていますが、このように分類や日本語訳が統一されていないので、色々なサイトの説明を比較するときは名称の違いに惑わされないようにご注意ください。

短縮 (contraction)

単語・発音の中間を省略

「主語と助動詞」「助動詞+not」「助動詞+have」の形はI’llやcan’t、should’veのようにアポストロフィがついて短縮形になり、発音も中間部分が省略されます。なお発音における短縮にはsort of→sortaなどの形は含まれません。sorta、kindaなどは発音の弱化などによって起こった変化からきているため、短縮とは別の区分です。

単語・フレーズ短縮形
I willI’ll
you areyou’re
we havewe’ve

弱化 (reduction)、脱落 (deletion)、消失 (elision)

弱く発音する、発音を省略する

発音が弱くなる、または発音しなくなる現象は弱化、脱落、消失に分類されます。そして発音が省略された旨を文字で示すために、アポストロフィ (‘) で置き換えられることが良くあります。つまり、goin’ や abou’ などの表記は発音の弱化・脱落・消失が行われていることを表しています。なお、脱落・消失により音が聞こえなくとも、時間的な空白部分として間は残ります。

弱化 (reduction)

特定の音の発音が弱くなることです。語頭のhや語尾のt、d、gは弱化が起こりやすいと言われています。弱いどころか発音自体行われない場合もありますが、そのケースは本記事では脱落と分類しています。

弱化する音単語・フレーズ弱化後
hhim_im
home_ome
dgoodgoo_
andan_
gwalkingwalkin_
tcan’tcan’_
thattha_
弱化・省略される部分を分かりやすくするためにアンダースコア (_) に変更していますが、このような表記方法があるわけではありません

脱落 (deletion)

発音を省略することを脱落と言います。わずかでも発音していれば弱化、全く発音しなければ脱落と考えてよいかと思いますが、どちらも弱化にまとめられていることがあります。また、次に説明する消失も発音を省略しているので、消失は脱落のパターンの1つとして説明されている場合もあります。

弱化・脱落・消失の分類は統一されていないので用語として理解しようとすると混乱しがちですが、内容は単純なので言葉の定義に惑わされないように気を付けてくださいね。

消失 (elision)

同じ子音が連続する場合、前の子音は発音されなくなります。この現象は消失と呼ばれています。同じ子音と書きましたが無声音/有声音は関係ないため、「tとb」「fとv」のように口の動きが同じ子音であれば消失が起こりえます。例えば、bad timingのdの発音は消失します。

消失する音単語・フレーズ消失語
pdrop pensdro_ pens
tate tunaa__ tuna
tate dinnera__ dinner
dcould trycoul_ try

さらに、破裂音であるp、b、t、d、k、gの場合は次の子音の種類に限らず一瞬ポーズが起きたような音、声門閉鎖音 (glottal stop) に変わります。元の音が消えているため、このケースも消失とみなすようです。

変わる音単語・フレーズ変化語
pdrop thatdro_ that
dcould playcoul_ play
kback tobac_ to

特にt、dについては-tlyや-dlyのような語形で頻繁につかわれているため、声門閉鎖音に変わるケースが多いようです。

変わる音単語・フレーズ変化語
texactlyexac_ly
dhardlyhar_ly

声門閉鎖音 (glottal stop)

声門閉鎖音はあまりメジャーではないので簡単に説明をしておきます。

声門閉鎖音とは「声門を閉じた後、一気に声門を開けた時に出る音」であり、IPAの発音記号では[ʔ]と表記されます。 単なる無音ではなく、文法上でも子音に分類されています。普段声門を閉じる動作を意識することはありませんが、咳をする直前の引っかかりは声門を閉じているからですし、「ハッ!」という掛け声でも声門は閉じます。また、発音の省略の他にreactionを/riʔǽkʃən/のように発音し、連続した母音の発音を明確に響かせるために挿入されることもあるようです。

どのような発音か文字では分かりづらいので、以下の動画も参照ください。

ちなみに上記動画の最後で、イギリス英語ではコックニーアクセント (cockney accent) が使われると述べていますが、コックニーとは東ロンドンで生まれ育った人達が使う方言で、下町・俗っぽいという印象を与えると言われています。映画「マイ・フェア・レディ」や「ハリーポッター」で聞いたことがある方もいるかもしれません。コックニーの詳細は以下動画や「Cockney – コックニーの発音を練習してみよう」「Cockney – コックニーというイギリス英語の方言の意味、説明、発音ガイド、ライミング・スラングと例」の説明を参照ください。

連結 (linking)

前後の単語の発音が繋がる

話すスピードを早くすると「単語の最後の子音」と「次の単語の語頭の母音」が繋がります。この現象は連結と呼ばれています。難しくはありませんがカタカナ発音ではうまく連結の発音はできないので、発音の勉強をしっかりしていないと腑に落ちないかもしれません。

パターン単語・フレーズ発音のイメージ
t + 母音front ofフランタブ
d + 母音kind ofカインダブ
k + 母音pick upピカップ
l + 母音call onコーロン

なお、thank youのkとyのように、子音同士が繋がって別の音に変化するパターンが連結として説明される場合がありますが、本記事では同化として扱っています。

同化 (assimilation)、フラッピング (flapping)

前後の音が影響して別の音になる

前後の音の影響で音自体が変化する場合があります。ここでは同化とフラッピングについて説明します。

同化 (assimilation)

前後の音が影響し音が変化する現象を同化と言います。前の音が後ろの音に影響を与える「進行同化 (progressive assimilation)」、後ろの音が前の音に影響を与える「逆行同化 (regressive assimilation)」、前後双方の音から新しい音が誕生する「相互同化 (coalescent assimilation)」の3パターンに分類されています。

lunch stopを発音する際、chの影響でstopのsの発音が/s/から/ʃ/に変わるようなものを進行同化と言います。seven busesのsevenのnがbueseのbの影響で/m/のような発音になりますが、このケースは逆行同化です。さらに、meet youのt yの部分の発音が/t/と/j/から/tʃ/に変わるような場合は相互同化と呼ばれます。ちなみに相互同化は融合同化とも呼ばれます。

パターン単語・フレーズ発音の変化
進行同化lunch stop/s/→/ʃ/
逆行同化seven buses/n/ → /m/
相互同化meet you/t/ /j/ → /tʃ/

以下の動画にも相互同化の説明があるので合わせて参照ください。

フラッピング (flapping)

tの音がd (日本語で言えばラ行) のような音に変化する現象をフラッピングと言います。同化のパターンの1つとして扱われることもあります。water→ワラ、shut up→シャラップのようは発音変化が該当し、特に北米・オーストラリア・ニュージーランドの発音で発生するようです。

この現象は「tの前後が母音の発音」かつ「直後にアクセントがない」場合などで発生し、音が変わったtは「flap t」または「flapped t」などと呼ばれています。「母音 + t + l」「母音 + r + t + l」のパターンや、単語間の発音が連結した時でも起こり得るため、what is→wadisのような発音を行う事もあります。

パターン単語・フレーズ発音の変化
母音 + t + 母音waterwader
母音 + t + 母音citycidy
母音 + t + llittlelidle
母音 + r + t + lstartlestardle
連結+フラッピングwhat iswadis

flap tを説明する動画を参考までに掲載しておきますね。

その他 (方言など)

音声の変化には様々な要因がある

音声変化については、これまで説明したもの以外にも「曖昧母音 (schwa)」「強形と弱形 (strong weak form)」「抑揚 (intonation)」など様々な事象が絡んできます。個人の好みや方言なども関係しますし、そもそも英語は国によって発音の特徴が異なりますしね。地域や個人レベルで考えたら千差万別なのかもしれません。

省略・変化の組み合わせ

組み合わされて全く別の発音になる

短縮形の項目に掲載したwannaやsortaなどは、発音の連結・脱落が組み合わさった結果の形と考えられます。例えばwant to → wannaの変化については、

want to
→ wan’ to (前のtが消失)
→ wann’o (tの脱落)
→ wanna (同化)

のような過程が考えられます (確証が取れないので、実際には異なるかもしれません)。その他にも様々なパターンを考察しているページがありましたいので、そちらも参考にしてみてくだだい。

色々説明してきましたが、実際には用語や説明をわざわざ覚える必要はありません。ただ、楽に発音するにはどのようなパターンがあるかを把握しておくと、発音の練習に役立つかと思います。



視覚方言 (eye dialect)

概要

発音を文字に反映させた表現

視覚方言とは標準的でない発音を視覚的に表現する手法で英語では「eye dialect」と呼ばれています。実際は方言・訛りだけでなく、口語での省略表現や独特な喋り方・ユーモアを表現する手法としても活用されています。「あざーす (ありがとうございますの略)」をマンガや小説のセリフとして掲載するのと同じようなモノと言えば分かりやすいでしょうか。つまり、英文中でチンピラ・ならず者がしゃべる荒い口調や、別地域の方言、子どもの口調などを文字で表現する手法として、小説・ドラマ(の字幕)・マンガ・ゲームなどで使われています。

説明の便宜上、以下3つのパターンに分類してご紹介します。

  • 発音の省略
  • 発音記号で表記
  • 発音が変わる

発音の省略

短縮・弱化・脱落・消失

発音の項目で説明した、短縮・弱化・脱落・消失を文字で表現する方法は比較的よく使われます。個人的に見たことがある表現を以下にいくつか掲載してあります。省略された場所は基本的にアポストロフィ (‘) が付加されているため、元の単語は想像しやすいかと思います。

省略位置単語省略後
語頭about’bout
hem’em
him‘im
hundred‘undred
語尾~ing~in’
aboutabou’
andan’
goodgoo’
ofo’
theth’
中間beautifulbeau’iful
believeb’lieve
betterbe’er
everyev’ry
littleli’l
neverne’er
probablyprob’ly
supposes’ppose
waterwa’er
youry’r
better thanbetter’n
my boym’boy
emの元の単語hemはthemと同じ意味

なお、wa’erなどのように単語の中間にアポストロフィが挿入された場合、その部分は声門閉鎖音で発音するようです。訛りを強調するような場面だとドラマの字幕にも反映されることがあります。(以下画像はイギリス滞在により発音が変わってしまったことが強調されている場面)

発音記号で表記

発音による綴りの変化

cough /kɔ́(ː)f/ → coffのように、一部の文字が発音記号に近い文字で置き換えられることがあります。小説では話者が無学であることを表すためのこの表記方法が使われる場合があります (英単語の綴りは勉強していないと知りえないため)。is that → ‘zat のように短縮形のような表記になる場合もあります。

元の英単語は表記の音を頼りに推測する必要がありますが、文脈と合わせて考えればそこまで難しくないかと思います。

省略位置単語省略後
単語coughcoff
givegiv
gogow
hereheah
oftenoffen
sayssez
somesum
waswuz
wherewhar
フレーズaren’t youaren’cha
is thatzat
told youtoldja
what awotta
what is thatwassat / wazzat
what is thiswuzzis
what’s upsup / wussup / wuzzup
without youwithoucha

発音自体が変わる

特定の規則でスペルが変更される

to → ter、for → ferのように、非標準的な発音が綴りに反映される表記もあります。これは綴りや発音から元の英単語を推測するには難易度が高く、英語学習者にとっては厄介な視覚方言です。

訛りによる発音変化は数多く存在しますが、ここでは「音声学資料としての映画 – 『マイ・フェア・レディ』(1964)に見るコックニー方言-」に記載がある例をいくつか抜粋して紹介します。

変化する発音元の単語表記
/w/ → /v/bewarebevare
/ei/ → / ai/paypy
taketike
todaytodai
/i/ → /e/sitset
/θ/ → /f/bathbaf
thinkfink
threefree
/ou/ → /au/ohaw

視覚方言の存在を知らないで上記表現を見た場合、理解できないのではないでしょうか。辞書で検索しても掲載されていませんし、実際に悩んだことがある方もいるかもしれません

別の例として、「視覚方言のスペリング―ハーストンの『ヨナのとうごまの木』より―」で言及されている視覚方言もいくつか紹介します。

元の単語表記
asez
catchketch
dogdawg
forgetfuhgit
getgit
hearheer
ifeffen
justjes’
nothingnuffn
thede
theredere
totuh
whatwhut
wherewhar
yellowyaller
youyuh
youryo

ぱっと見だと理解するのは難しいと感じますが、英語が母国語であれば文脈から元の語が容易に把握できるようですよ…。その他にも表現は多彩なので、「ハグリッド語」や「Category:English eye dialect (Wikipedia)」のなどの情報もよければ参照ください。

その他

視覚方言とは異なりますが、複数の語が1つにまとまった単語や純粋に方言として辞書に掲載されている単語もあります。さすがにこのような単語を事前に把握するのは難しいので、出合った時に (必要に応じて) 覚えていくしかありません。

元々の単語・フレーズ単語
goinggwine
pissed offp.o.ed / po’ed
what you may call itwhatchamacallit
what’s itwhatsit
young oneyoung’un
maybemebbe
piggypiggie
prettypurty

まとめ

多読前に英単語の省略が起こりうることだけ認識しておく

英語学習には多読がオススメとされていますが、ネイティブの娯楽用の文章というのは英語の教科書やTOEIC・英検用の教材に掲載されているほど”素直な”文章ではありません。ハリーポッターや英訳版ドラゴンボールなど、メジャーな題材でさえ視覚方言は使用されています。何も知らずに視覚方言に出合うと理解が及ばず、読み進めるのが嫌になってしまうかもしれません。ですが、視覚方言のような表現があるとだけでも認識していれば心理的なストレスは多少軽減されるかと思います。もしこれから多読を始めるという方が周りにいるのであれば、ぜひ英単語には視覚方言なんてのもあるよと一言お伝えいただければと思います。

口語表現、視覚方言に慣れたいなら

オススメは英語版「ドラゴンボール」

視覚方言や口語表現をあえて勉強して覚える必要はないと思いますが、慣れたいという場合は英語マンガ「ドラゴンボール」がオススメです。アニメやマンガで既に内容を知っていれば、理解できない表現があってもストーリーの把握に支障はありませんし、口語・視覚方言は他のマンガよりも多く使われているので数冊読めばかなり慣れてきます。

オススメできる点
  • やっぱりストーリが面白い!
  • 戦闘メインと思いきや、会話量は多い
  • 会話内容や英単語は比較的簡単なものが多い
  • 吹き出しの幅が広く、文字はそこまで小さくない
注意点
  • 擬音語が多いので、慣れてないと邪魔に感じる
  • 口語・視覚方言が多く、やはり慣れていないと読み辛い
  • 日本語の英訳において、ニュアンスが変わっている箇所が所々ある
  • 画質が少し悪いと感じるページがある
ドラゴンボール (1~16巻)

英語タイトル Dragon Ball

ドラゴンボール (17~42巻)

英語タイトル Dragon Ball Z

参考資料・サイト

本記事で記載した英単語の省略表現、発音の短縮・変化、視覚方言については以下サイトの内容を参考にしました。それぞれで定義や分類が異なる場合があり、また私自身の理解が不正確な可能性もありますので、本記事の説明と一致しない解説がなされている場合もあるかもしれません。その旨ご了承ください。