TOEICでは語彙力がどれほど必要なのか、2016年からの新形式は旧形式と比較して語彙レベルが変わっているのか、この疑問を解決すべく調査しました。

TOEICとは?

国際コミュニケーション英語能力テスト

TOEICとは、英語によるコミュニケーション能力を測るための試験です。日本ではTOEICと言えば一般的にリスニングとライティングの技能を測るTOEIC L&Rの事を指すことが多いですが、その他にもSpeaking & Writeing TestやBridge Testがあります。

TOEIC Speaking & Writing Test

スピーキングとライティングの技能を測るために2007年に始まった試験です。試験会場ではPCを利用して音声の吹込みと英文入力を行う方式で、それぞれ0~200のスコアで評価されます。なお、Speaking Test、Writing Testはそれぞれ単体のテストも実施されています。

TOEIC Bridge Test

英語学習初心者向けに用意されたのが試験です。2001年から実施されており、リスニング50問 + リーディング50問で構成されています。スコアは20〜180点 (各10〜90点) で評価されます。

種類計測対象合計スコア
Listening & Reading Test聞く・読む英語力10~990
Speaking & Writnig Tests話す・書く英語力0~400
Bridge Test初・中級者の英語力20~180


TOEIC L&Rとは?

「聞く」「読む」ための英語力を測る試験

TOEIC Listening & Reading Test (TOEIC L&R) とは、英語によるコミュニケーション能力 (リスニングとリーディング技能) を測るための試験です。多くの国で実施されているため、世界共通の指標にもなります。試験は年10回ほど実施されており、2016年度のTOEIC L&R受験者は2,500,000人にも及ぶそうです。

種類問題数試験時間スコア
リスニング10045分5~495
リーディング10075分5~495

語彙数とTOEIC スコアの関係

一般的には合計スコア900以上を狙うには語彙数が10,000ほど必要と言われています。本記事ではこの辺りが本当かどうかを確認するために、TOEIC公式模試を題材に、使われている英単語の語彙レベルを調べています。

TOEIC L&Rスコア分布

上記は2016年度 (2016年4月~2017年3月) に実施されたTOEIC L&R (公開テスト) の961,593人の合計スコア分布で、TOEIC Program DATA & ANALYSIS 2017に掲載されているデータをグラフ化したものです。公式公開されているデータは色々あるので、興味がある方は以下リンク先を参照ください。

2016年以降の新形式の変更点

パート問題数
2006年以前2006~2016年2016年以降
Listening1写真描写20106 (-4)
2応答303025 (-5)
3会話303039 (+9)
4説明文203030 (±0)
Reading5短文穴埋め404030 (-10)
6長文穴埋め201216 (+4)
71つの文書402829 (+1)
複数の文書02025 (+5)
長文問題が増加

リスニング、リーディング共に各パートの問題数に増減がありました (計100題ずつは変わらず)。特にリスニング・リーディングともに短文の問題数が削減され、代わりに会話や長文の問題が増加しています。パート7では、3つの文章から構成される設問も新たに増えています。長文に慣れていない方には難易度が増加したと感じるポイントかもしれません。

口語やチャットなど、フランクな英文が追加

メールやチャットなどで使うフランクな表現が登場するようになりました。この辺りはより実践的な英文がでるようになったと評価する方もいるようです。

名称変更

TOEICの形式変更は2016年5月からですが、2016年8月には名称も変更されています。名称統一のために変更したようですね。なお、TOEIC S&Wは名称変更のみで出題形式の変更はありません。

旧名称新名称
TOEIC テストTOEIC Listening & Rreading Test
TOEIC Speaking & WritingTOEIC Speaking & Writing Test

TOEIC 公式問題集

公式問題集の特徴

TOEIC L&Rの公式問題集はTOEIC本試験と同じプロセスで作成され、ナレーターも本番と同じ方が担当しているため、難易度は本試験と同等であると言われています。なお、TOEIC L&Rは2016年に形式が変更されていますが問題の難易度自体に変更はないと公式で言われているので、2016年以前の公式問題集でも実力試しにはなります。

TOEIC公式問題集は何度か名称が変更されており、分かりづらいので発売年月順にまとめました (発売年月はAmazonのデータを参考)。

TOEIC L&R 公式問題集

TOEIC L&R 公式問題集 – 特化型

TOEIC S&W / Bridge 公式問題集

英検、TOEIC、TOFELとの対照表 (2017)

TOEIC、TOFELなどの試験と英検のレベルの関係がわかる情報が色々あります。
英語4技能試験情報サイトで2017年のデータが公開されていますよ!

TOEIC向けの無料の英単語リスト

TSL (Toeic Service List)

TOEIC向けに様々な英単語集が販売されていますが、TOEICに出題される英単語の99%をカバーすると謳っている無料の英単語リストもあります。明治大学の教授らが選定したNGSLとTSLという英単語リストです。詳細は以下記事を参照ください。

TOEIC L&Rの語彙レベル解析

概要

TOEIC L&Rの公式問題集で使われている英文の語彙レベルを26000語レベルで分類していきます。語彙レベルはアルクのSVL 12000 (1~12000語レベル) と極限の英単語・終極の英単語 (12001~26000語レベル) を基準としています。解析手順については「英文の語彙レベル解析手順について」を参照ください。

基準となる英単語リスト語彙レベルレビュー記事
SVL 120001~12000レビュー
極限の英単語 Vol.1~412001~24000レビュー
終極の英単語24001~26000

本記事で解析の対象にする単語

TOEICの本試験の問題は公開されていないので、本記事の解析では本試験と同等のプロセスで作成されている公式問題集を対象とします。

具体的には2017年2月発売の公式 TOEIC Listening & Reading 問題集 2を利用します。この問題集には2回分の試験が掲載されているので第1回目の試験問題を対象とし、リスニングはセリフのスクリプトと解答の選択肢、リーディングは問題文と解答の選択肢の英単語の語彙レベルを調べました。

分類解析対象となる英文
Listening読み上げられるスクリプト、テキストに記載されている解答選択肢
Readingテキストに記載されている設問のパッセージ、問題文と解答選択肢
英文中に記載されているURL、メールアドレス、メールや手紙形式の定型文 (メールタイトル、文末の Sincerely や所属/名前の部分など) は除外

TOEIC L&Rの語彙レベル

総語数

上記がTOEIC 新公式問題集 Vol.5の模試で使われた全英単語9654語を、語彙レベルで分類した結果です。続いて使われた英単語の種類のデータを調べていきます。

英単語の種類

単語の重複を除外し、英単語の種類で分類した結果が上記です。1751種類の英単語が使われていました。10000語レベルまでの単語は二桁以上登場し、それ以降は殆ど使われていないことが分かります。範囲外の単語は55単語ありましたが、どのような単語かは後述します。

TOEIC L&Rの語彙レベル – リスニング・リーディング別 –

英単語の種類

内容問題数総語数単語の種類
リスニング10045791051
リーディング10050751310
総語数や単語の種類には、人名や商品名などは含まれていない。以降も同様。

使われた英単語をリンスニング・リーディング別で分類した結果がこちらです。棒グラフが英単語の種類の数、折れ線グラフが構成割合を示しています。なお、折れ線グラフ同士の比較では、割合が高い (上側にある) ほど簡単な英単語の割合が多いことを示しています。

全体的にリーディングの方が英文のボリュームが多く、高レベルの英単語の出現割合も多いことが分かりますね。パート毎に分けてさらに詳しく見ていきます。

TOEIC L&Rの語彙レベル – リスニング パート別 –

英単語の種類

内容問題数総語数単語の種類
パート1写真描写616086
パート2応答25586279
パート3会話392223662
パート4説明文301610564

パート別に語彙レベルの差が分かるように分類し、さらに語数 (縦軸) のスケールを50まで拡大したグラフです。語数に関してはパート1と2、パート3と4はそれぞれ似通った傾向がみられましたが、割合についても確認してみましょう。

上記はパート1~4で使われた英単語の語彙レベル別に構成割合を確認したグラフです。この結果から、使われる英単語の簡単さは「パート2 > パート1 > パート 3 ≒ パート4」という結果が出ました。パート1は写真描写問題で問題数も英単語数も少ないのですが、写真の助けがある分パート2よりも多彩な英単語が使われているという事かもしれませんね。

英単語の種類 (正解/不正解別)

リスニング問題の解答の選択肢で使われる英単語を正解/不正解で分類してみた結果がコチラです。僅かではありますが正解の選択肢に使われる英単語の方が語彙レベルの低い (簡単な) 英単語の構成割合が高いようです。

TOEIC L&Rの語彙レベル – リーディング パート別 –

英単語の種類

内容問題数総語数単語の種類
パート5短文穴埋め30534359
パート6長文穴埋め16502287
パート71つの文書292022664
複数の文書252017666

パート別に語彙レベルの差が分かるように分類し、さらに語数 (縦軸) のスケールを50まで拡大したグラフです。なお、パート7は1つの文章/複数の文章の設問で分割してグラフに掲載しています。どのパートも10000語レベルまでの英単語が使われていることが分かります。割合についても確認してみましょう

上記はパート5~7で使われた英単語の語彙レベル別に構成割合を確認したグラフです。パート5は短文選択問題で多くの品詞が使われている分、他のパートよりも語彙レベルが低い英単語の割合が少なくなっていました。また、パート7は1つの文章/複数の文書それぞれで確認していますが、語彙レベルに関しては大差ないようです。

英単語の種類 (正解/不正解別)

リーディング問題の解答の選択肢で使われる英単語を正解/不正解で分類してみた結果がコチラです。リスニング同様、正解の選択肢に使われる英単語の方が語彙レベルの低い (簡単な) 英単語の構成割合が高い傾向があるようです。

TOEICでハイスコアを獲得するために必要な語彙レベル

英単語の95%をカバーできる9,600語が1つの目標

一般的に英文を「楽しむ」には総語数の95%、「キチンと理解する」には総語数の98%が目安と言われていますが、TOEICでハイスコアを取得するには単語単体の意味を正確に把握している必要があります。そのため、目安は総語数よりも、使われる英単語の種類の何%を把握てきているかで考えた方が分かりやすいでしょう。

これまで語彙レベルを調べた結果、語彙数は9000~10000程度までは増やせば増やしただけ効果があり、それ以上は1000~2000語増やした程度ではさほど効果が無いと言えるかと思います。満点を目指すならまだしも、TOEIC L&R 900点であれば語彙数は9000~10000までで十分でしょう。一応細かく計算して、ここではTOEICの英単語の種類の95%カバーできる9600語が目安としておきます。

解答に知らない英単語は選ばない方が良い…?

正解/不正解で使われる英単語の語彙レベルを調べた結果、正解の選択肢で使われる英単語の方が僅かに語彙レベルが低いことが分かりました。顕著な差があるわけではありませんが、俗に言われる「知らない単語は選ばない」という戦略は一理あるようです。

範囲外の単語

26000語の範囲外の単語が55種類登場しました。英単語は派生語や複合語が多く、特にパート5の短文穴埋め問題では多くの品詞が使われるため、26000語の範囲外になる単語はどうしても出てきます。が、実は語彙数が9000もあれば理解・推測できる単語が殆どではないかと思います。参考までに55語のうち、2回以上使われていた13語を掲載します。

2回以上登場した26000語範囲外の英単語 (13語)

availability, catering, eyeglass, floodwater, graphics, moderator, paycheck, promotional, publicist, renovation, reschedule, roadway, successfully

SVL 12000の一覧確認方法

ここまで語彙レベル解析に利用してきたアルクの究極の英単語 SVL 12000ですが、英単語リスト一覧を確認したい場合、アルクのサイトで一覧画像を見る、英単語集 (書籍/Kindle) を購入する、AmazonのKindle Unlimitedに加入する、Android/iOSのスマホアプリを購入するといった方法があります。詳細はSVL 12000のレビュー記事を参照ください。



語彙レベル比較

新旧TOEICの語彙レベル比較

題材総語数単語の種類
新形式公式 TOEIC Listening & Reading 問題集 2 (2017年2月発売)96541751
旧形式TOEICテスト新公式問題集 Vol.5 (2012年6月発売)96511748

上記は新旧TOEICの公式問題集の語彙レベル比較の結果です。新形式では長文問題や口語表現が増えていますが、基本的には新旧TOEICで語彙レベルに変化はないと言えるようです。旧形式のTOEIC公式問題集の語彙レベル解析詳細については以下記事を参照ください。

TOEICと英検の語彙レベル比較

英検準1級との比較

題材総語数単語の種類試験時間
公式 TOEIC Listening & Reading 問題集 2 (2017年2月発売)96541751120分
英検準1級試験の問題 (2017年6月実施)72331542127分

上記はTOEICの公式問題集と英検準1級試験の語彙レベル比較の結果です。英検準1級の語彙数は8000~9000レベルと一般的に言われている通り、確かに語彙数9000~10000が目安のTOEICよりも若干語彙レベルが低いようです。なお、英検準1級試験の語彙レベル解析の対象は筆記 (リスニング、リーディング、ライティング)とスピーキングの英文です。詳細は以下記事を参照ください。

英検1級との比較

題材総語数単語の種類試験時間
公式 TOEIC Listening & Reading 問題集 2 (2017年2月発売)96541751120分
英検1級試験の問題 (2017年6月実施)96232048145分

上記はTOEICの公式問題集と英検1級試験の語彙レベル比較の結果です。英検1級の語彙数は10000~15000レベルと一般的に言われおり、実際にTOEICよりもはるかに語彙レベルが高いことが分かりますね。なお、英検1級試験の語彙レベル解析の対象は筆記 (リスニング、リーディング、ライティング)とスピーキングの英文です。詳細は以下記事を参照ください。