TOEICでは語彙力がどれほど必要なのか? この疑問を解決すべく、実際の英単語の語彙レベルを確認した結果を公開します。なお、本記事は2006年~2016年までの形式に対応した公式問題集 (2012年発売) を利用しています。2016年以降の新形式に関する語彙レベル解析は以下記事を参照ください。

TOEICとは?

国際コミュニケーション英語能力テスト

TOEICとは、英語によるコミュニケーション能力を測るための試験です。日本ではTOEICと言えば一般的にリスニングとライティングの技能を測るTOEIC L&Rの事を指します。試験は年10回ほど実施されており、2016年度のTOEIC L&R受験者は2,500,000人にも及ぶそうです。

2016年以降の新形式に対応したTOEICの情報は以下記事を参照ください。

2006年以前の形式からの変更点

パート問題数
2006年以前2006~2016年
Listening1写真描写2010 (-10)
2応答3030 (±0)
3会話3030 (±0)
4説明文2030 (+10)
Reading5短文穴埋め4040 (±0)
6長文穴埋め2012 (-8)
71つの文書4028 (-12)
2つの文書020 (+20)
長文問題が増加

リスニング、リーディング共に各パートの問題数に増減がありました (計100題ずつは変わらず)。特にリーディング問題のパート7では、2つの文章が出題される問題が追加され、全体的に問題は長文化しました。また、パート6は誤文訂正問題から長文穴埋め問題に変更されています。

ナレーションの発音が多国化

2006年以前はナレーションは米国発音のみだったのですが、2006年以降は米国に加えカナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランドの発音が採用されました。それぞれ全体の25%ずつ使われているようですよ。

TOEIC L&R (2006~2016年形式) の語彙レベル解析

概要

TOEIC L&Rの公式問題集で使われている英文の語彙レベルを26000語レベルで分類していきます。語彙レベルはアルクのSVL 12000 (1~12000語レベル) と極限の英単語・終極の英単語 (12001~26000語レベル) を基準としています。解析手順については「英文の語彙レベル解析手順について」を参照ください。

基準となる英単語リスト語彙レベルレビュー記事
SVL 120001~12000レビュー
極限の英単語 Vol.1~412001~24000レビュー
終極の英単語24001~26000

本記事で解析の対象にする単語

TOEICの本試験の問題は公開されていないので、本記事の解析では本試験と同等のプロセスで作成されている公式問題集を対象とします。

具体的には2012年に発売されたTOEIC 新公式問題集 Vol.5を利用します。この問題集には2回分の試験が掲載されているので第1回目の試験問題を対象とし、リスニングはセリフのスクリプトと解答の選択肢、リーディングは問題文と解答の選択肢の英単語の語彙レベルを調べました。

分類解析対象となる英文
Listening読み上げられるスクリプト、テキストに記載されている解答選択肢
Readingテキストに記載されている設問のパッセージ、問題文と解答選択肢
英文中に記載されているURL、メールアドレス、メールや手紙形式の定型文 (メールタイトル、文末の Sincerely や所属/名前の部分など) は除外

TOEIC L&Rの語彙レベル

総語数

上記がTOEIC 新公式問題集 Vol.5の模試で使われた全英単語9561語を、語彙レベルで分類した結果です。続いて使われた英単語の種類のデータを調べていきます。

英単語の種類

単語の重複を除外し、英単語の種類で分類した結果が上記です。1748種類の英単語が使われていました。SVL 1~9レベルの9000語ほど語彙があれば試験で登場する英単語の95%がカバーできることが分かります。

10000語レベル以上の英単語も多少使われていましたが、このレベルの英単語をカバーするためにボキャビルするのはオススメできません。例えば、9001~12000語レベルの英単語を3000語覚えても実際に使われるのはわずか22単語だけでしたので、このレベルの英単語を覚えるよりもリスニングや文法の学習、多読などに時間を割いた方が有用だと思います。

TOEIC L&Rの語彙レベル – リスニング・リーディング別 –

英単語の種類

内容問題数総語数単語の種類
リスニング10044371059
リーディング10051241293
総語数や単語の種類には、人名や商品名などは含まれていない。以降も同様。

使われた英単語をリンスニング・リーディング別で分類した結果がこちらです。リーディングの方が英文のボリュームが多いため、使われる英単語の種類はリスニングよりも多いですが、語彙レベルの傾向はリスニング・リーディングともに同じようです。

TOEIC L&Rの語彙レベル – リスニング パート別 –

英単語の種類

内容問題数総語数単語の種類
パート1写真描写10285145
パート2応答30695332
パート3会話301827560
パート4説明文301630565

パート別に語彙レベルの差が分かるように分類し、さらに語数 (縦軸) のスケールを50まで拡大したグラフです。パート1の写真描画は比較的簡単なイメージありますが、使われる英単語自体は10000語レベルのモノまでありました。どのパートが簡単か、という議論はありますが、語彙レベルに関しては差は殆ど無いようです。

英単語の種類 (正解/不正解別)

選択肢語彙レベル別の英単語カバー率
6,000語7,000語8,000語9,000語
正解94.1%95.2%97.1%98.2%
不正解92.2%93.8%96.2%96.6%

リスニング問題の解答の選択肢で使われる英単語を正解/不正解で分類してみた結果がコチラです。語彙数が7000あれば、正解となる選択肢で使われる英単語の95.2%をカバーできていることが分かります。不正解選択肢よりも若干ですが語彙レベルが低い傾向にあるようですが、顕著に差が出ているとは言い難いですね。

TOEIC L&Rの語彙レベル – リーディング パート別 –

英単語の種類

内容問題数総語数単語の種類
パート5短文穴埋め40806454
パート6長文穴埋め12453229
パート71つの文書282118670
2つの文書201747578

パート別に語彙レベルの差が分かるように分類し、さらに語数 (縦軸) のスケールを50まで拡大したグラフです。なお、パート7は1つの文章/2つの文章の設問で分割してグラフに掲載しています。

パート5は短文穴埋め問題ながら長文問題のパート7とほぼ同じ結果でした。短文ながら使われる英単語は多彩ということですので、語彙レベルでの難易度としてはパート5の方が高いという事ですね。

英単語の種類 (正解/不正解別)

選択肢語彙レベル別の英単語カバー率
6,000語7,000語8,000語9,000語
正解92.3%93.8%97.1%97.1%
不正解91.1%93.7%95.4%96.7%

リーディング問題の解答の選択肢で使われる英単語を正解/不正解で分類してみた結果がコチラです。リスニングと比較すると、6000語レベル以上の英単語の出現割合が増えていることが分かりましたが、基本的に8000~9000語レベルの英単語までしか使われていない点は同じです。

TOEICでハイスコアを獲得するために必要な語彙レベル

英単語の95%をカバーできる9,000語が1つの目標

語彙レベルを調べた結果、語彙数は9000までは増やせば増やしただけ効果があり、それ以上は1000~2000語増やした程度ではさほど効果が無いと言えるかと思います。満点を目指すならまだしも、TOEIC L&R 900点であれば語彙数は9000で十分でしょう。それ以上はボキャビルではなく他の分野の学習に時間を費やすべきではないでしょうか。

範囲外の単語

26000語の範囲外の単語が43種類登場しました。その中で2回以上使われていた12語を参考までに掲載します。英単語は派生語や複合語が多いため、26000語の範囲外になる単語はどうしても出てきますが、実は語彙数が9000もあれば理解・推測できる単語が殆どではないかと思います。

2回以上登場した26000語範囲外の英単語 (12語)

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